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上告の理由になっていない

名古屋高裁、三重県の同和教育行政を断罪ー弓矢事件控訴審判決について

事務所だより-長谷川弁護士の豆電球

http://www.kita-houritsu.com/tayori/060322-120456.html

 

   3月20日、名古屋高裁民事第二部は、弓矢人権裁判で一審判決を一部変更する原告一部勝訴の判決を言い渡した。
 この裁判は、三重県の異常とも言うべき歪んだ同和教育、部落解放同盟の不当な糾弾闘争の実態を明らかにする上で重要な意味を持つものである。
 そこで、同事件の顛末と判決のもつ意味についてお話ししたいと思う。


〈弓矢人権裁判とは〉 
 弓矢人権裁判のきっかけとなった事件は、次のようなものである。
 三重県松阪市の高校教諭であった弓矢伸一氏(現在、47歳)は、平成12年春、居住地での自治会分離独立問題に取り組む中で、近所の人と話をしている時、「お嬢さんの将来に良いですしね」という発言を行い、この発言と自治会分離独立の取り組みが差別発言とされ、部落解放同盟とこれと一体となった三重県教育委員会から、長期にわたって執拗、陰湿な追及と糾弾を受け、心身共に疲弊し、本人も家族も自殺の一歩手前まで立ち至った。 弓矢さんとともに、校長も解放同盟から追及の矢面に立たされていたが、校長はその渦中で自らの命を絶った。弓矢さんは、自分や校長に対する解同や教育委員会の追及が不法行為にあたるとして、三重県と解同幹部らに対して損害賠償(慰謝料の支払い)を求める訴訟を提起した。これが事件のあらましである。

〈判決のもつ意味〉
 一審の津地裁は、平成16年11月、三重県に対し、220万円の慰謝料の支払いを命じる原告一部の勝訴判決を言い渡していたが、今回の名古屋高裁の判決は、同判決を一部変更し、三重県の損害賠償額を330万円に増額させる判決を言い渡したのである。

 一審、二審とも、弓矢さんの発言と行動が部落差別にあたると認定したことは残念であったが(原告側は、不適切で誤解を招く発言であったが、部落差別の意図はなく、私人間の発言に過ぎず、その場で謝罪しており、両者の間で解決済みの問題であると主張していた)、仮に部落差別にあたる言動であっても、それに対する追及は対象者の人格を尊重した形で行われなければならないこと、解同の糾弾会なるものに行政が関与、荷担することは違法であるとして、行政の賠償責任を認定した点で、きわめて重要な意義を有するものである。

 一審判決は、三重県教育委員会が解同の行う糾弾会への参加と同糾弾会に提出する反省文の作成を弓矢さんに強要したことを違法とした。
 しかし、二審判決は、次の点で、三重県の責任について一審判決をさらに前進させたものである。
①解同の糾弾会に公務員が参加することは、正当な職務の範囲に属するものではなく、違法であると認定したこと。
 同判決に従えば、今後、三重県は、解同主催の糾弾会に教職員を参加させることは  許されない筈である。
②糾弾会への参加指示だけでなく、三重県の違法性を次の通り拡張したこと。
 第1に、三重県教育委員会(同和推進委員ー三重県では、同和問題を専任で取り組む同推委員というものが選ばれている!)の行った、弓矢さんに対する反省文(「自分を見つめて」と題されている)の書き直しについて、両親や祖父の「差別心」等の言及を強要したことを新たに違法と認定した。
 第2に、同和推進委員が弓矢さんを連行して、弓矢さんの自宅の近所を戸別訪問させ、「自分を見つめて」を配布した行為を違法と認定した。
 このように、今回の二審判決は、三重県の責任を厳しく断罪したのである。

〈是正されるべき三重県の同和教育ー解同との癒着・一体化〉
 今回の事件を通じて明らかとなった三重県の同和教育の異常な実態は、まことにすさまじいものであった。
 三重県では、同和問題に積極的に取り組む人間になることが児童、生徒に対する教育の指導目標とされ、部落解放同盟が主催する様々な学習会や集会に生徒が参加することを奨励している。前述したように、同和教育を推進するための教員配置のための予算を三重県が支出している。また、教員を解同が主催または共催する研修会等に参加させ、糾弾会にも参加させている。今回の弓矢事件でも、解同主催の糾弾学習会(事実上のつるし上げの場であった)には約400名が参加しているが、そのうち200名以上は、県下の教職員であった!
 今回の高裁判決は、糾弾学習会への参加は正当な職務ではなく、違法であるとされたが、三重県教育委員会は、共産党の県会議員からの公開質問状に対する回答の中で「糾弾学習会は研修と学習の場」と平然と述べる始末である。
 また、三重県では、民間団体との連携の名のもとに解同と教育現場、教育委員会との一体化が進められ、「差別事象」なるものが学校現場で発生すると、直ちに解放同盟にも情報が伝わる仕組みになっている。  
こうした中で、教育現場では、部落問題について、自由に発言できない状況が作られ、「部落はこわい」「解同を批判したら大変なことになる」という雰囲気が醸成されることになってきた。
 このような三重県の同和教育の現状は、直ちに是正されなければならない。


中日新聞朝刊 3月23日(木曜日)三重版

 県上告の方針 高校教諭の差別発言めぐる訴訟
 
 差別発言を理由に同僚の教諭らに脅迫や強要などを受けたとして県立松阪商業高校の元教諭弓矢伸一さん(47)=現長島高教諭=が県や同僚らに慰謝料を求めた訴訟で、県は二十二日、県に約三百三十万の支払いを命じた名古屋高裁判決を不服として上告する方針を決めた。理由について、県教育委員会は「一般公務員ではなく、人権に関わり深い教員が部落差別の意図が推認できる行為や発言を行ったことに対して、研修の充実や責任の自覚が求められるのは当然。判決には国家賠償法の解釈に誤りがある」としている。
 原告が差別発言をしたとして同僚教諭らの追及を受け、反省文の提出や確認会、糾弾学習会などの出席を求められたことについて、同高裁は二十日、確認会などへの出席が「正当な公務の範囲を逸脱する」として、一審の津地裁判決の約二百二十万円を上回る約三百三十万円の支払を県に命じた。

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