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普遍的価値の「人権」、同感。

社説:人権条例凍結 政府・与党の教訓にしたい

毎日新聞 2006年3月27日

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/

 昨年10月に制定された鳥取県人権救済条例の6月施行を凍結する条例案が県議会で全会一致で可決された。

 議員提出で成立した条例が施行を待たずに県側の「凍結条例」で廃止される可能性が強まった。まさに異例の事態である。

 人権救済条例は余りにも多くの問題をはらんでいた。このまま施行されると、人権救済どころか、人権を侵害する恐れが出てくる。県側が施行に待ったをかけたのは、妥当な判断だといえる。

 人権救済条例は、政府・与党が成立を目指す人権擁護法案の地域版だ。人権擁護法案は「人権侵害」の定義があいまいで、メディア規制につながる危険性を内包している。野党側の反対に加え自民党内にも異論が多く、昨年の通常国会への提出が見送られた。

 ところが、鳥取県では人権侵害を地域で救済すべきだと県議38人のうち35人が条例案を共同提出し、すんなり成立した。

 条例では、救済機関の人権救済委員会が人権侵害の加害者への是正勧告や氏名の公表のほか、調査を拒んだ場合に最高5万円の過料を科すことができる。こうした厳しい罰則を設ける一方で、警察や刑務所など公的機関には調査拒否権を認め、「官に甘く民に厳しい」内容となった。

 「私生活に関する事実、肖像その他の情報を公然と摘示する行為」を禁止行為に掲げたことで、メディア規制につながるとの危惧(きぐ)も深まった。地元マスコミ15社は、報道の自由が脅かされるとして条例を批判する声明を発表した。

 条例に真っ向から反対する県弁護士会は、人権救済委員会への委員派遣を拒否した。県のホームページには「怖くて鳥取に行けなくなった」など条例に批判的な書き込みが殺到した。

 「基本的人権の尊重」は憲法にも規定されている。だが、現実に人権の侵害を法的に規制するとなると、さまざまな問題が出てくることは人権擁護法案の議論を見ても明らかだった。普遍的な価値である「人権」を一つの県だけで定義づけ、救済しようというのにも無理があった。

 そもそも、県弁護士会から「憲法違反のおそれすらある」と指弾された条例案を成立させたことが間違いだった。

 県は条例の施行を凍結するとともに、弁護士などによる検討委員会を設置し、県内の人権侵害の実態を調査したうえで条例を見直すことにしているが、小手先の手直しで県民の理解が得られる新たな条例ができるとは思えない。人権侵害の事例を直視し、その救済のあり方を時間をかけ抜本的に議論する必要がある。

 人権擁護法案は今年の通常国会への提出は見送られた。政府・与党が今後どのような対応をとるのかは不明だが、鳥取県の今回の事例は、大きな痛手に違いない。人権擁護法案の国会提出の道筋が見えなくなった。

 政府・与党には、鳥取県のケースをきちんと検証し大きな教訓にしてもらいたい。

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