鳥取条例の単なるやり直しでは意味がな
2006年2月14日
鳥取県議会議長
前田 宏 殿
全国地域人権運動総連合
議 長 石岡克美
「鳥取県人権救済条例」の施行延期と
知事部局提案事項の充実を求めます
前略
鳥取県・片山善博知事は2月1日、鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例(「人権救済条例」)の無期限で施行を延期する条例案と、学識経験者など13人による「条例見直し検討委員会」を設けるための予算措置を議会側に説明しました。
片山知事の提起は、昨年10月に全国で初めて「人権救済条例」が可決されて以降、県内外から以前にも増して危惧や批判など、改廃を求める運動が高まりをみせたことの反映であり、真摯な対応と評価できます。
特に、条文の規定や制定の根拠等に曖昧性が見られることに係わって、県内外のマスコミや弁護士会、「人権条例に関する懇話会」等からも、言論表現や報道の自由を侵害し、真に必要な人権侵害救済が軽視され、新たな人権侵害が生じかねないと批判が起こったのは当然と考えます。
私ども全国人権連は、政府において求められる新たな人権侵害救済機関は、①「人権委員会」は国連パリ原則にのっとって政府(行政)から独立した機関とし、委員の人選、運営、予算の面でも独立性が担保できるようにする、②人権救済の強制調査の対象は、憲法上の基本的人権及び国際人権条約で規定されている権利の侵害、すなわち国家・行政権力や社会的権力(大企業など)による人権侵害に限定し、報道や国民の表現活動を規制したり、私人間の領域に立ち入るものとはしない、③新たな立法行為に対して人権アセスメントを導入し、法律による人権への影響を事前にチェックする機能も持たせる、ことが最低要件と考え、政府案の廃案運動を全国的に展開してきました。
一方、地方段階の人権救済制度は、埼玉県や兵庫県に男女共同参画の苦情処理機関が設置され、和解、勧告、提言など迅速な対応が行われています。こうした個別人権課題に限定した苦情処理機関であれば憲法上の疑義を生じることはありません。子どもや障害者などの権利を擁護する条例等も実施されており、鳥取県においてもこれらの積極面や教訓を生かすことが重要と考えます。
今後、県議会内で知事部局提案案件の議論が行われますが、長年にわたり旧身分に係わる障壁を解消し自由な社会的交流の実現をめざし、また民主主義や憲法の人権条項を暮らしに根付かせるために様々な人権課題にも取り組んできた立場から、標題に係わり次の諸点を要請いたします。
記
1、知事部局提案を真摯に受け止めていただき、「検討委員会」人選の公平・中立性の確保、「検討委員会」委員の公募枠の設定、「検討委員会」会議や議事録の公開、ヒヤリング団体・個人の公募や意見募集などを議会決議するなどして、県内外の信頼と期待に応えて下さい。
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