鳥取の教訓を生かそう
読売のタイトルのとおり。
鳥取で議論されていることは、国の議論に通ずる。
「救済」すべき事案は何か
解同の基本法案を取り入れました、などということで、
国会議員の多数から賛同が得られると目論んだのが誤算の始まりといえる。
法案を無期凍結し、一から議論しなおすべきだ。
2月8日付・読売社説(2)
[鳥取人権条例]「人権擁護法案再考への教訓だ」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060207ig91.htm
元々、無理がある条例だったということだろう。
鳥取県が全国に先駆けて昨年10月に制定した人権侵害救済条例について、片山善博知事が6月から予定されていた施行の凍結を表明した。県議会に無期限で施行を先送りする条例を提案する。
議員提案で成立した条例を、執行機関の知事が凍結するのは異例のことだ。条例には余りにも問題点が多かった。凍結は当然だ。
まず、人権侵害の定義が曖昧(あいまい)だった。「差別的な言動」「虐待」「誹謗(ひぼう)中傷」などを挙げたが、片山知事も「悪口でも対象になるのでは、という懸念を抱かせてしまう」と危うさを認めたほどだ。
加害者に是正勧告を行う救済機関である人権救済推進委員会は、知事が直轄する組織で県職員が事務局を担うなど、独立性に疑問符がついた。恣意(しい)的な運用の恐れも拭(ぬぐ)いきれなかった。
委員会は強い強制力を持つ。調査を拒んだり、妨害したりすれば、過料などの罰則を科すとされた。だが、関係行政機関は「公共の安全と秩序の維持」などへの支障を理由に挙げれば拒否できた。
警察の強圧的な取り調べや刑務所での職員による暴行事件などの救済申し立てがあっても、県警本部長や刑務所長が拒否すれば、調査はストップしてしまう。公権力に対する甘さも問題だった。
鳥取県弁護士会も条例を批判し、委員の派遣を拒否したため、委員会の設立も困難な状況に追い込まれていた。
鳥取県は、識者で構成する検討委員会を設けて人権侵害の実例を調査し、条例を全面的に見直す考えだ。
だが、そもそも、地方で司法的判断を下す救済機関が必要か、という疑問がある。普遍的であるべき人権に関する判断を一自治体で行えば、自治体によって対応が異なり、混乱しかねない。
人権侵害の解決に、自治体がなすべきは、一足飛びに救済機関をつくることではあるまい。
高齢者や児童に対する虐待の防止法に定められた自治体の権限を活用すれば、被害を防げる事案も少なくない。
人権救済を求める被害者にとって、警察や裁判所などの敷居は高い。
休日や夜の時間帯にも足を運びやすい相談窓口を広げ、専門機関へつなぐことも、自治体に求められる役割だ。差別問題やセクハラ防止の意識啓発といった、地道に取り組むべき施策もある。
鳥取県の条例破綻(はたん)は、政府が国会再提出を目指す人権擁護法案の再考に当たっての教訓となる。論議を尽くして懸念を払拭(ふっしょく)しないと、前へは進めない。
(2006年2月8日)
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