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「解同」の狙い

月刊誌「地域と人権」05年2月号掲載

(資料 月刊誌編集部)
鳥取県議会における地方人権救済機関設置の論議
(前文のみ掲載)

 鳥取県並びに県議会は、地方段階でいち早く地方人権救済機関のあり方について設置条例の議論を行ってきた所ですが、昨年(04年)12月県議会は、知事提案並びに議員提案の条例案を継続審査としました。
 理由は、委員会報告や本会議での討論によると、救済委員会が知事付属機関であることから独立性や公平性に欠ける、公権力による監視が高まる、乱用防止の工夫がない、強制権限の付与への考慮がない、2月の特区申請の帰趨を見る必要がある、というものです。
 知事提案はかつての政府提案法案と重なる内容で罰則規定があり、6名の議員提案内容は知事提案のものと基本的に変わらず公務員による差別や虐待が禁止対象者として明記されている程度です。

 ここでは、9月と12月県議会での質疑を通じて、何が問題とされたのかを明らかにしたいと考えます。
 全国人権連は既にこの間集会などで県段階等の救済機関設置条例について次のような見解を明らかにしています。
 新たな人権侵害救済機関は、①「人権委員会」は国連パリ原則にのっとって政府から独立した機関とし、委員の人選、運営、予算の面でも独立性が担保できるようにする、②人権救済の強制調査の対象は、憲法上の基本的人権及び国際人権条約で規定されている権利の侵害、すなわち国家・行政権力や社会的権力(大企業など)による人権侵害に限定し、報道や国民の表現活動を規制したり私人間の領域に立ち入るものとはしない、③新たな立法行為に対して人権アセスメントを導入し、法律による人権への影響を事前にチェックする機能も持たせる、ことが必要です。
 「解同」のねらいは、同和対策の終了との関連で出されてきた人権侵害救済という側面を利用して、人権委員会へ滑り込むなど、今後の各種人権政策・制度に権益を得る足がかりを確保することにあります。
 廃案となった「人権擁護法案」には、「解同」が悲願としてきた部落解放基本法と共通する内容(国民の意識を問題にし表現活動や私人間の領域に立ち入るなど)が含まれており、政府提案と共通する大きな問題があることから、私たちは廃案運動を展開したものです。
 今後とも「解同」請願に断固反対し(一部修正もあり得ない)、地方議会での取り組みを強めるとともに、真の人権擁護に資する方策を求める(「人権擁護法」という名称に拘るものではなく、中身が問題)立場から国会に政府提案が為されれば同様の観点から自由法曹団など民主諸団体と十分吟味し、対応をしてゆきます。
 なお、県段階で人権救済機関設置の条例化の動きがありますが、行政機関や企業等による、人権侵害、差別行為だけでなく報道や県民の言論・表現行為も対象に、しかも強制調査権限を持ち過料も課すなど、非常に問題が多いものです。
 一方、埼玉県や兵庫県には男女共同参画の苦情処理機関が設置され、和解、勧告、提言など迅速な対応が行われている分野もあり、こうした機関の積極面を生かしてゆくことが重要と考えます。

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