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損保会社の人権侵害問題等を追及

 2005年11月14日

法務省あて

 全国地域人権運動総連合

   議長  石岡 克美

                                     
 2005年度要求書等について

(1)申し入れ事項
1,国民主権や戦争放棄、基本的人権を明記する日本国憲法と行政による教育条件整備や教育の中立性をうたう教育基本法の改悪をやめて、国民の平和に生きる権利を擁護し、「小さな政府」ではなく、暮らしと福祉、教育の充実がはかられるようにされたい。
2,ハンセン病元患者の社会復帰等に関し、社会的に偏見が残されていることから、宿泊拒否や入居拒否などの権利侵害が生じている。相談・救済体制を確立するとともに、実効ある啓発を強化されたい。また、自治体及び民間の行う啓発活動・支援活動に関して、助成措置を講じること。

(2)要求・話し合い事項
1,先に廃案となった人権擁護法案は、人権や差別に対する明瞭な定義もなく、「差別的言動」等と称し言論表現行為への国家の介入により国民の言論活動を抑圧になりかねず、真の人権救済に値しないものである。新たな法案は国会で全会一致で可決されるよう、人権委員会は権力や大企業による人権侵害のみを特別救済の対象にし、報道や表現規制をその対象からはずし、国連パリ原則にのっとった独立性と実効性が確保されるものにされたい。
2,「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」が来年6月から施行されるが、人権擁護法案と同様の問題を抱え、マスコミをはじめ県内外から条例改廃の意見が噴出している。自治体の人権救済は苦情処理・監視に係わる領域では容認できるが、国がこれから整備をはかる内容と同一的な機能をもつ機関設置については、人権救済に差異が生じるなど、憲法上の問題を内包している。省の見解を明らかにされたい。
3,部落問題に係わる「確認・糾弾」行為は、えせ同和行為そのものであり、えせ同和行為の横行の要因でもある。「確認・糾弾」会への公務員の参加は相変わらず続いており、「落書きや発言」があれば「解同」に通報・協議することが求められ「通報」が遅れると行政の認識が問われたりもしている。こうした事態を省はどのように認識しているのか、法務局や人権擁護委員、地方公共団体への指導方針も含めて明らかにし、違法行為の社会的排除を強められたい。
4,人権啓発に係わる来年度予算の内容を明らかにされたい。各地の人権啓発では、いまだに同和問題の比重が高く、解決へと前進している現状や課題の背景が明確にされていない。適切な指導を行われたい。
5,行政書士による「職務上請求書」の悪用により、戸籍や住民票が不正に取得される事件が起きている。自治体段階での「個人情報保護条例」に係わり個人情報の管理権から「本人告知」の整備が必要と考えるが、省の見解を明らかにされたい。
  一方、「解同」は行政書士に対する糾弾行為を通じて入手したリストをもとに、自治体に対し情報開示を行っていることについて、違法と考えるが、省の見解を明らかにされたい。
  また、報道によれば地方法務局が把握してる情報をもとに、関係自治体に調査を依頼しているようだが、法務局で把握してる全容、さらに調査の結果を明らかにされたい。
6,A社B損害サービス課が交通事故の対応にあたり、金融庁告示67号(04年12月6日)第6条をもとに、政治的見解や信教、労組への加盟、門地及び本籍地、性生活、犯罪歴に関する機微情報の「同意」を求めていることに対し、憲法上ならびに個人情報保護法と係わって人権侵害につながる行為と判断するが、省として損保等の会社での実態把握とこの件に関する見解を明らかにされたい。

交渉の記録

 省側から土持敏裕・総務課長などが、人権連は石岡克美・議長、新井直樹・事務局長、前田武・常任幹事をはじめ各県代表が参加しました。

 先ず、部落問題に係わる「確認・糾弾」行為は、えせ同和行為横行の要因でもあり、違法行為の社会的排除を強めること、特に弓矢人権裁判と係わって、裁判の陳述書や「解放新聞」で「総務課長の通知」(法務省権管第280号通知)は「(課長が)死文化している」と公言していることについて省の見解を正しました。

 「省としては、当事者同士の話し合いによる解決までも否定するものではないが、民間運動団体が行う確認・糾弾行為について、従来から啓発の手段としては好ましくないと考えているところである。そこで平成元年にその趣旨を通知として地方法務局に発し、現在においてもその考え方を維持しており、確認糾弾に出席を求められた者からの相談があった場合、必要に応じて関係者等に、いわゆる法務省見解を伝えているところである」と、従来の見解を繰り返し、「2002年の交渉の時に、解放同盟との間でそういう発言があったかどうか、ということで調べてみましたが確認はできませんでした。(人権啓発課長が言ったように)通知の線は何ら変わっていない」と、「死文化」発言をきっぱりと否定しました。

  次に人権擁護法案の一から議論のやり直しや違法性も指摘される鳥取県の「人権救済機関設置条例」の問題を取り上げました。

 法について省は「必要な法案。できるだけ早く国会に再提出できるように努力している」と、また「鳥取県の人権侵害救済推進条例については、鳥取県議会という地方議会のご審議を経て成立した条例です。国の立場として当否等について申し上げることは差し控えます」と返答。

 杉浦法務大臣が来年の通常国会にこだわらず与党議員の検討を求めるような発言をしている事に関しては、「出す以上は成立するものでなければならない。そのためには内容や出し方をもう1度検討しなければならないという趣旨であり、この点は我々と変わるところはない」と。

 一方、鳥取をはじめ今後県段階での機関設置条例が全国化しかねない動きがあるなかで、「人権侵害対象範囲が自治体によってばらばらなのは好ましくない」との認識を示し、鳥取で「人権擁護上問題があると判断すれば対応していきたい」とも述べました。

 次に行政書士による「職務上請求書」の悪用により、戸籍や住民票が不正に取得された事件の解明と、「本人告知」の整備について省の見解を求めました。

 省は基本的に各自治体が制定する条例に関することと回答を避け、一方、「今、現在進めている調査の段階では、具体的に部落問題に用いるという情報を入手したという確たる証拠はまだ得られていない。当事者に話を聞かないと具体的にそれをどう使ったのか判明しない」と、「部落差別につながる身元調査」に利用したかの報道を否定しました

 その他、ハンセン病元患者の社会復帰に係わる条件整備の課題等を提起しました。

A社の人権侵害につながる「同意」問題

「政治的見解、信教(宗教、思想および信条をいう)、労働組合への加盟、人種および民族、門地および本籍地、保健医療および性生活、ならびに犯罪歴に関する情報(センシティブ=機微=情報)に関し、保険金の支払いをするために必要な範囲で情報を取得・利用させていただくことを同意いただくものです」・・・・・・・・・・。

 憲法の人権尊重理念を真っ向から否定し、基本的人権を侵害するこの文書は、大手損保会社A社の高知B課が、今年6月、交通事故に巻き込まれた高知市内の中学生の保護者に送った、「同意書の送付について」と題する文書にある記述です。同社はこの文書とともに、「同意書」をその保護者に送っています。 保護者が「同意書」の問題点をすぐに指摘したにもかかわらず、B課が長らく放置していたという対応も問題でした。

 「同意書」そのものには問題の記述はありませんが、法律の専門家によれば「2文書は一体のもの」。全国人権連高知県連(高知人権連)は、この問題でA社に対して「重大な問題だ」ときびしく指摘。 本部と連携しながら、適切な対応を求めてきました。また12月1日には、全国人権連本部と東日本各都県連の代表がA社の本社を訪れ、この問題で話し合いました。

 A社の高知B課はこのなかで、「(『同意書』は)個人情報保護法の施行にともない、高知だけでつくった。本社は一切関与していない。本社からはおしかりを受けている。 金融庁の『金融分野における個人情報保護に関するガイドライン』なども参考にした」と説明。また高知人権連への対応のなかで、高知人権連が「名称はどうあれ、確認・糾弾行為がおこなわれる場には出席すべきではない」と指摘したことに対し、A社は「(確認・糾弾会のことは)承知している。 出るつもりはない」と答えました。

 12月1日、A社は全国人権連に対し、高知B課がイントラネット(企業内の閉じたインターネット)にこの様式を掲示していたことから、社内調査をした結果、8拠点で361枚が使用されていたことを明らかにし、早急にこの回収と破棄、関係者への謝罪をおこなっているとのべました。またこの場でA社は、この問題については「人権上、きわめて問題のある文書」との認識を示し、「これを見た社員が問題意識を持たず見過ごしたり、問題意識を持っても、それを提起しなかったことは遺憾」との見解を示しました。同時に「問題のある文書ではあるが、この問題となる情報の取得・利用はしていない」ことも強調しました。        

 また全国人権連は、11月14日の法務省交渉と、翌11月15日の金融庁申し入れで、この問題を取り上げました。法務省交渉の結果および金融庁申し入れについての結果は、こちらをご覧ください(全国人権連の別窓が開きます)。

 A社はその後、今回の問題についてコメントを発表。「今後、二度とこのような事件を引き起こすことのないよう、これまでの人権啓発研修全般を見直し、社員の人権意識を高めていく」とのべています。

      

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