鳥取県条例の制定根拠は曖昧
月刊誌「地域と人権」
05年11月5日号 所感雑感
鳥取県議会の清風と自民党、信の3会派などは10月12日、議員発議の『人権救済推進および手続きに関する条例案』を賛成多数で可決した。昨年12月の定例県議会に県が提案し継続審議となっていた条例等の内容を各会派が「修正」したもので、全国の都道府県では初めて。
5日に浜田妙子県議が疑義を表明。11日の委員会質疑では山田幸夫県議(解同県連書記長)が賛成を表明。12日の議会最終日には討論・可決と。拙速であるとの批判は免れない。県弁護士会は「憲法違反」、マスコミ15社も「条例を容認できない」と共同して申し入れ。県内外から批判が高まっている。
地方単位での人権救済制度の検討は、「人権擁護法案」が02年3月に国会に提出された後の6月定例県議会の一般質問で、片山知事が「住民連合」の杉根修県議(解同県連顧問)から要請を受けて表明していた。
知事「政府、国がやるのであればオンブズマンのような仕組みとか、司法機関が関与したらどうかとか、国会がつくったらどうかということを申し上げましたが、この人権擁護委員会のようなものを地方単位でつくったらどうか、国一つでつくるのではなくて、地方単位でこの種の人権擁護機関をつくったらどうかということを考えております。恐らくその方がもっときめ細かい的確な判断が下せるのではないかと思います」
知事は、「解同」の意向を受けつつ官僚機構排除の思考から、地方での人権委員会を人権特区の構想ももちつつ、具体化を歓迎しているのだろう。
しかし、条例は人権擁護法案と同様に、人権・差別の定義があいまいで、県民の言論分野に過料をもって介入するなど差別の解消に逆行し人権侵害行為を引き起こしかねないもの。しかも平成16年度に鳥取県内で法務局に寄せられた人権侵犯事件は約220件だが、どれほどが「悪質」なのか、処理規程で間に合わなかった事例はどれほどか、司法に附して救済に困難がどれほど生じたのか、実態は明らかにされていない。「人権侵害に悩む人がいる」(知事)から「必要」?
憲法の人権規定が地方で取り扱いに差異が生じる事態は、「分権」ではない。
| 固定リンク
« 人権擁護法案の動向 | トップページ | 権利の制限 »
「月刊誌「地域と人権」」カテゴリの記事
- 福岡 一斉監査請求(2007.03.16)
- 弓矢「差別事件」の真相 本人が語る(2007.02.14)
- 弓矢裁判とはなんだったのか(2007.02.14)
- 島根県・事業終結へ(2007.02.13)
- 加配教員の適正化課題(2007.02.09)
最近のコメント