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部落問題に特化した条例にすべきでない、廃止を

「県人権条例 抜本修正強く求める 懇話会で弁護士ら」 
 
     日本海新聞などによれば、

  鳥取県人権侵害救済条例について、弁護士や学識経験者らから意見を聞く懇話会が28日県民文化会館で開かれ、県議や市民ら約20人が傍聴。参加者全員から、「表現の自由を委縮させる」「運用面では補えない」などと問題点が指摘され、条例の抜本修正を求める意見が相次いだ、という。

    懇話会は、県弁護士会から松本光寿会長ら5人、岡山大学法科大学院の岡田雅夫教授や鳥取大学の国歳真臣名誉教授ら学識経験者、鳥取地裁の簡裁民事調停委員、進行役の藤井喜臣副知事ら12人が出席。

    藤井副知事が「今のままでは条例の円滑な運営は非常に難しい。とりわけ弁護士の協力は得られない。今後どうしたらいいか意見を出していただきたい」とあいさつ。意見の取り扱いについて「きょうの意見は議会に伝える。修正は議会の役割だが、そこに行く段階で執行部として修正の提案をすることもできる」と説明。

   県弁護士側は「条例は表現の自由を委縮させる。調査拒否には過料の制裁や、勧告に従わない場合は公表という手段が用いられる。行政権力としては明らかに行き過ぎ」と批判。また、「片山知事が『運用面で工夫すれば、乗り切れる』と言っていたが、人による偶然が作用する制度で、制度が抜本的に改善されなければ、弁護士会は応ずるべきでない」と強調。さらに、条例が迅速な解決を目的としていることについては、「人種差別も男女差別も日本には実態規定がない。国の判例を参考にして迅速にやると、人権救済にはならない。救済しようと思えば長い時間がかかる」と指摘。加えて、条例で規定されている訴訟援助で、集めた資料を裁判で使える規定について、「裁判を起すための資料集めで人権救済の申し立てをして自分の裁判に使っていいのか」と疑問を投げ掛けた。
   このように弁護士会の5人の役員が、私人間の人権問題に行政が罰則をもって介入する一方、公権力による人権侵害が救済されないことを批判した。

    県は今年まとめた人権意識調査アンケートの結果を基に、9割が私人間トラブルを経験し6割が公的機関への相談を希望と説明。原則は和解を目指す制度で、過料や氏名公表は条例の実効性を担保するための最終手段とした。

    しかし、鳥取大地域学部の中村英樹講師は「アンケート結果は侵害事案の調査にあたる人権救済委員会に相手をやっつけてほしいというものではない」「国連がわが国に是正勧告している公権力による人権侵害はスッポリ抜けている。市民間の問題を第一義とするのはバランスが崩れている」として、氏名公表など強権的な委員会の在り方に疑問を投げ掛け、専門的な助言を行う窓口設置や差別的取り扱いに特化した条例に改める必要があるとした。税理士の長井いずみ氏は「(条例の役割は)相談窓口や既存の機関の紹介程度でいいのではないか」と述べた。

 
    条例の原案となる県案の諮問委員会会長だった国歳眞臣・鳥取大名誉教授は「司法で対処できず漏れる人権侵害をどうやって救うのかという問題がある」と条例の趣旨には理解を示しながら、「(人権侵害対象が)“あらゆる”というのは難しい。部落問題の研究者として部落差別禁止法を整備すべきと言ってきたが、国の法案同様、条例もこれをごまかしている」と述べ、対象を限定すべきだと主張。国歳教授は「委員が5人は少ない。氏名公表や過料には反対」とした。

    懇話会後に松本会長は「学識経験者や現場の意見を聞けて大いに参考になり、有意義な会だった。参加者の温度差はあるが、条例には否定的な意見ばかりだったと認識している。知事は改廃の議論を進めてほしい」と要望した。

 
 同会は次回、一月七日に開かれる。

 「県人権救済条例:改廃求め1万人署名へ」 共産党県委員会など5団体が連絡会結成 

    県人権救済条例は言論や表現の自由を侵害するなどとして、日本共産党県委員会など5団体が27日、「県連絡会」(小橋太一事務局長)を結成したと発表した。同会は2月県議会へ向け、1万人を目標に条例の改廃を求める署名を年明けから集める。
    結成したのは▽共産党県委員会▽民青同盟県委員会▽新日本婦人の会▽日本国民救援会県本部▽治安維持法国賠同盟県本部。
    「公権力の人権侵害には無力」「調査拒否には刑事罰並みの制裁が加えられるのに憲法が定める適正手続きの保障がない」など、条例の問題点を指摘している。
    同党県委員会の市谷知子書記長は「平和や暮らしを守る前提となる市民の言論を行政が封じる流れが全国にできかねない」と危機感を表明。条例廃止の直接請求はしないが、署名の目標を請求に必要な「有権者の50分の1」にほぼあたる1万人とした。(毎日新聞報道)

    

     いずれにしても、「差別や虐待からの救済を掲げる鳥取県人権侵害救済条例」と称されているが、推進者側の真の意図は「部落差別禁止法の整備」が念頭にあったことが、今回の懇話会で明らかになった。

  しかも、理念は別にして、条例は運用によって問題が軽減するものでもないこと、このことも明らかになった。

  知事は「条例内容を判断したい」と懇話会の意見を尊重する旨の発言をしていたわけだから、枝葉の問題で、つまり運用や対象となる「差別と虐待」を限定すればいいと、安易な対応を検討するべきではなく、改廃にかかわる問題だと認識すべきである。

 

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