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2005年12月に作成された記事

「差別事象」なぜ起きる、整理が必要

 本年、「差別事象」に対する「解同」らの「確認糾弾」闘争は、テレ朝の田原らの発言をもって行われ、以降、浅田などの牛肉偽装をめぐる報道はマスコミにでることはなくなった。
 「朝日新聞」は人権擁護法・早期成立の社説を2度も掲げ、「解同」らの運動を結果的に後押しする形になった。
 さらに、鳥取県では、人権救済条例について、県議会で真摯な議論が行われ継続審議となっていたものが、何らかの思惑から、条例案の公開や十分な議論と合意もなく、唐突に可決にいたり、いま県内外から批判にさらされている。また「解放月間」などの在りようについても批判が広がりを見せている。

自治体が、「解同」などの思考や運動と一定の距離をもって、部落差別問題解決の施策を実施することに、これまでも、行政の主体性・中立性・公平性の観点から、政府文書でも幾多問題が指摘されてきた。
 以下の資料でも明らかである。
 あくる年に、いかに不合理な差別を排除し真の言論・表現の自由を拡大してゆくか、課題は多い。

 
 平成17年(ネ)第19号慰謝料請求控訴事件、いわゆる三重県の弓矢氏が控訴人(一審原告)の人権裁判であるが、解同ら被控訴人の最終準備書面(05年12月1日)より。

 
ハ)全国市長会九州支部

 意見具申や大綱では、差別事象の発生に係わる「確認・糾弾」を否定し、法務局等の人権擁護機関に委ねるべきであるとしているが、しかしながら、これらの人権擁護機関は差別事象への対応・指導について有効に機能していないのが実情であるとの意見表明(乙ロ第106号証の頁21最下段)
ニ)三重県(同頁24最下段)
 いわゆる確認・糾弾行為について、61年意見具申においては「差別の不合理性についての社会的認識を高める効果があったことは否定できない……」と評価し記述しているが、このことに言及することなく、学習や啓発の場として行なうものまで否定的に捉えている。
 本県においては、確認・糾弾は学習・啓発の場であるとの考えのもとに「差別した者」の同和問題に対する理解・認識を深める、差別意識の払拭に向けて社会的認識を高めるものであると理解している。
ホ)京都府(同頁26最下段)

 このような状況の中で、送付された指針には、同和問題をめぐる実体並びに民間運動団体の自主的な行動への関与などについて、行政実務を超えた内容が盛り込まれており、啓発活動の推進に当たって、指針をそのまま行政実務上の参考とすることには問題があり、遺憾とするものである。
ヘ)京都府市長会(同頁26の2段目)
 地域改善対策協議会の意見具申と、昭和62年3月17日に総務庁長官官房地域改善対策室から出された地域改善対策啓発指針は、同和地区住民の置かれている現状についての適確な認識が不十分なまま、国の責務が明確にされず、部落解放のための基本的理念の欠如、啓発の為の公益法人の設立構想、並びに運動団体の行なう糾弾の否定など、同和対策審議会の答申にそぐわない点があるので、国におかれては、今後十分配慮されるよう強く要望する。
ト)大阪府(同頁27最上段、頁28中段)
 指針には、差別の実態や被差別者の立場に対する認識について一方的、断定的な内容が多く、同和問題の本質についての理解が十分とは言えない。(略)指針は、差別の不合理性についての社会的認識を高めるなど、いわゆる確認・糾弾行為が、これまで果たしてきた役割やそれに訴えざるを得なかった部落差別の現実があることに全く触れていない。
 又、指針は、差別事件について、法務省人権擁護局等の人権侵犯事件調査処理規定に基づいた事件処理等に従うことが法の趣旨に忠実であるとしている。
 差別事件に対する適切な救済と新たな差別の発生の防止がなされるとするならば、公的機関の処理に委ねることが望ましいあり方であろう。しかし、現在、個々の事件に対する行政的・司法的救済さえも十分になされているとは言い難い状況にあることが問題なのである。
チ)大阪市(同頁30中段)
 又、民間運動団体のいわゆる確認・糾弾に関し否定的であるが、これまでの本市の経験からすれば、確認・糾弾の場は差別事件の実態を把握し、差別が許し難い社会悪であることを明らかにし、差別者に対して自己批判を求め、差別意識解消に向けて話し合う場であり、その結果、相互理解を通じて差別解消に役立ってきたと理解している。
リ)大阪府下の各市30市と大阪府下の町村全部(同頁33上段)
 啓発指針は「民間運動団体の……啓発活動の中には同和問題解決に逆行する結果をもたらしているものがある」としているが、これらが今日まで国民に同和問題の認識と理解を深める上で果たしてきたことも事実であると理解している。
 又、いわゆる確認・糾弾について否定的であるが、意図的、悪質な差別事件については、厳しく対処することも必要であると考えられる。
なるほど差別事件に対しては、法務局等人権擁護行政機能の中で、被差別者の立場に立った的確な処理がなされるべきであると考えるが、行政的・司法的救済の体制が実質的に不十分であった中で、差別事件の実態を明らかにし、関係者に対する啓発効果を発揮してきたことや、企業・宗教界等啓発の取り組みが遅れていた方面についても、自発的な啓発活動積極化の契機になったこと等その果たしてきた役割については正当に評価されるべきである。
ヌ)広島県(同頁34上段~中段)
 差別事象の解決について、指針は、人権擁護行政機関において行なうべきものとしているが、これまでの差別事象の解決にあたっては、行政機関のかかわりや当事者の参加を含めた取り組みによって、在るべき解明、解決が図られてきた経緯がある。このことを全て否定されることになると、現実問題として、差別事象への迅速かつきめ細やかな対応は期し難いことになり、又、当事者双方が十分納得のいく解決を図るうえで疑問がある。
ル)香川県(同頁35上段)
 部落差別に対する被差別地域住民の自主的部落解放への手段である確認・糾弾に対する考え方については、参加者の学習の場として行なうものまで画一的に否定することには疑義がある。従って、差別事象の処理のあり方とその運用についてはさらに検討を要するものと考える。
>ヲ)徳島県(同頁35中段))
 又、確認・糾弾に対する考え方については、今日まで教育的要素を含んだものへと変化しており、本県では学習の場として認識している。
ワ) 高知県(同頁36下段)
 差別及び確認・糾弾に対する考え方並びに差別事象の処理のあり方についていわゆる確認・糾弾については、長い運動の過程において厳しい差別の現実のもとでその本質を明らかにし、差別の不合理性についての社会的認識を高めるなど同和問題の解決のための役割を果たしてきたものと認識している。
本県の差別事象の対応については、昭和55年の県の同和対策審議会答申の趣旨に則り基本的人権を相互に尊重し合う学習の場にするなど一定のルールが確立し、この基本方針における対応が定着しているものであり、今後ともこの方針を遵守してまいるものである。
>カ)福岡県(同頁38中段))
 又、行政的・司法的救済が確率されていない現状においては、部落差別の不合理性についての認識を高め、社会性のある確認糾弾行為の教育的効果までも否定することは出来ないと考える。
ヨ)京都法務局長の1987年10月の発言(同頁46上段)
 「差別事件については自治体や関係団体と協調協力し差別の土壌をとりのぞくべく取り組む」「糾弾については見解を述べる立場ではない」「解放同盟の活動も差別をなくしていく人権啓発の一環として重要なとりくみである」「同和関係者の自立向上などとは法務局としてはいっさい申し上げていない」「部落差別の解消は差別される側でなく差別する側の意識の改革が必要」「ささいな差別事象というものはなく、すべて重要だ」
タ)大阪法務局長の1987年9月の発言(同頁46中段~下段)
 「確認・糾弾については行政機関としては、本来意見を言うべきではない」「差別事件の処理にあたっては民間、自治体などと協力する」「同和問題の解決は一部落、一地方自治体だけで可能でなく、国全体の問題である」「部落差別の真の原因は部落出身者にあるのではなく、差別する側、社会の全体にある」「『ささいな』差別的表現というものは考えられない。差別を受ける立場にたって考えることが重要」

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部落問題に特化した条例にすべきでない、廃止を

「県人権条例 抜本修正強く求める 懇話会で弁護士ら」 
 
     日本海新聞などによれば、

  鳥取県人権侵害救済条例について、弁護士や学識経験者らから意見を聞く懇話会が28日県民文化会館で開かれ、県議や市民ら約20人が傍聴。参加者全員から、「表現の自由を委縮させる」「運用面では補えない」などと問題点が指摘され、条例の抜本修正を求める意見が相次いだ、という。

    懇話会は、県弁護士会から松本光寿会長ら5人、岡山大学法科大学院の岡田雅夫教授や鳥取大学の国歳真臣名誉教授ら学識経験者、鳥取地裁の簡裁民事調停委員、進行役の藤井喜臣副知事ら12人が出席。

    藤井副知事が「今のままでは条例の円滑な運営は非常に難しい。とりわけ弁護士の協力は得られない。今後どうしたらいいか意見を出していただきたい」とあいさつ。意見の取り扱いについて「きょうの意見は議会に伝える。修正は議会の役割だが、そこに行く段階で執行部として修正の提案をすることもできる」と説明。

   県弁護士側は「条例は表現の自由を委縮させる。調査拒否には過料の制裁や、勧告に従わない場合は公表という手段が用いられる。行政権力としては明らかに行き過ぎ」と批判。また、「片山知事が『運用面で工夫すれば、乗り切れる』と言っていたが、人による偶然が作用する制度で、制度が抜本的に改善されなければ、弁護士会は応ずるべきでない」と強調。さらに、条例が迅速な解決を目的としていることについては、「人種差別も男女差別も日本には実態規定がない。国の判例を参考にして迅速にやると、人権救済にはならない。救済しようと思えば長い時間がかかる」と指摘。加えて、条例で規定されている訴訟援助で、集めた資料を裁判で使える規定について、「裁判を起すための資料集めで人権救済の申し立てをして自分の裁判に使っていいのか」と疑問を投げ掛けた。
   このように弁護士会の5人の役員が、私人間の人権問題に行政が罰則をもって介入する一方、公権力による人権侵害が救済されないことを批判した。

    県は今年まとめた人権意識調査アンケートの結果を基に、9割が私人間トラブルを経験し6割が公的機関への相談を希望と説明。原則は和解を目指す制度で、過料や氏名公表は条例の実効性を担保するための最終手段とした。

    しかし、鳥取大地域学部の中村英樹講師は「アンケート結果は侵害事案の調査にあたる人権救済委員会に相手をやっつけてほしいというものではない」「国連がわが国に是正勧告している公権力による人権侵害はスッポリ抜けている。市民間の問題を第一義とするのはバランスが崩れている」として、氏名公表など強権的な委員会の在り方に疑問を投げ掛け、専門的な助言を行う窓口設置や差別的取り扱いに特化した条例に改める必要があるとした。税理士の長井いずみ氏は「(条例の役割は)相談窓口や既存の機関の紹介程度でいいのではないか」と述べた。

 
    条例の原案となる県案の諮問委員会会長だった国歳眞臣・鳥取大名誉教授は「司法で対処できず漏れる人権侵害をどうやって救うのかという問題がある」と条例の趣旨には理解を示しながら、「(人権侵害対象が)“あらゆる”というのは難しい。部落問題の研究者として部落差別禁止法を整備すべきと言ってきたが、国の法案同様、条例もこれをごまかしている」と述べ、対象を限定すべきだと主張。国歳教授は「委員が5人は少ない。氏名公表や過料には反対」とした。

    懇話会後に松本会長は「学識経験者や現場の意見を聞けて大いに参考になり、有意義な会だった。参加者の温度差はあるが、条例には否定的な意見ばかりだったと認識している。知事は改廃の議論を進めてほしい」と要望した。

 
 同会は次回、一月七日に開かれる。

 「県人権救済条例:改廃求め1万人署名へ」 共産党県委員会など5団体が連絡会結成 

    県人権救済条例は言論や表現の自由を侵害するなどとして、日本共産党県委員会など5団体が27日、「県連絡会」(小橋太一事務局長)を結成したと発表した。同会は2月県議会へ向け、1万人を目標に条例の改廃を求める署名を年明けから集める。
    結成したのは▽共産党県委員会▽民青同盟県委員会▽新日本婦人の会▽日本国民救援会県本部▽治安維持法国賠同盟県本部。
    「公権力の人権侵害には無力」「調査拒否には刑事罰並みの制裁が加えられるのに憲法が定める適正手続きの保障がない」など、条例の問題点を指摘している。
    同党県委員会の市谷知子書記長は「平和や暮らしを守る前提となる市民の言論を行政が封じる流れが全国にできかねない」と危機感を表明。条例廃止の直接請求はしないが、署名の目標を請求に必要な「有権者の50分の1」にほぼあたる1万人とした。(毎日新聞報道)

    

     いずれにしても、「差別や虐待からの救済を掲げる鳥取県人権侵害救済条例」と称されているが、推進者側の真の意図は「部落差別禁止法の整備」が念頭にあったことが、今回の懇話会で明らかになった。

  しかも、理念は別にして、条例は運用によって問題が軽減するものでもないこと、このことも明らかになった。

  知事は「条例内容を判断したい」と懇話会の意見を尊重する旨の発言をしていたわけだから、枝葉の問題で、つまり運用や対象となる「差別と虐待」を限定すればいいと、安易な対応を検討するべきではなく、改廃にかかわる問題だと認識すべきである。

 

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誹謗中傷だろうか

新井の自文は青で表示してます。

法務省人権擁護局のWEBより
 インターネットを悪用した人権侵害は止めましょう
 インターネットによりコミュニケーションの輪が広がり便利になる一方で,インターネットを悪用した行為が増えており,他人への中傷や侮蔑,無責任なうわさ,特定の個人のプライバシーに関する情報の無断掲示,差別的な落書きなど,人権やプライバシーの侵害につながる情報が流れています。
 インターネットを悪用することなく,お互いの人権を尊重した行動をとるようにしましょう。

 いま、ネット上の書き込みをめぐって、看過できない事態が生じています。

抗  議  文
 太宰府市議会は、人権を無視し、個人を誹謗・中傷する許されざる行為に対し、断固として抗議する。
 太宰府市は人権都市とすることを宣言し、人権尊重意識の高揚に努めてきた。本市議会として、その願いを踏みにじる行為は断じて許せない。
 直ちにそれらの行為を中止し、今後一切、人権を無視した行為がなされないよう強く求める。
   平成17年12月20日 太宰府市議会議長 村 山 弘 行

 

 これだけが何の注釈もなくWEB上の議会情報に掲載されています。
 ブログなどで「問題」とされている書き込みは次の内容とされています。

654 名前:なめ猫♪ ◆D97JmMuydA [age] 投稿日:2005/12/09(金) 20:12:58 ID:nWLoFB3j
 第一報です。
 今日午前10時過ぎから太宰府市議会全員協議会室で環境厚生委員会が開かれました。
 第1章から第4章まで章ごとに執行部が説明し、質疑・討論という方式で行われました。
 委員長は公明党ですが、男らしさ女らしさは場合によっては認めたほうがいいのでは?といっていました。
 あと外来語を使わない理由を質していました。
 副委員長も性別による差別的取り扱いの禁止は日本古来のよさが失われかねないと同調していました。
 驚いたのは8条に女性センターの設置で、いま働く婦人の家をルミナスと改称して女性センター扱いにしてて、そこを拠点施設にというのが審議会答申でしたが、県から働く婦人の家の目的外使用にあたり、補助金を返還せよと命じられたそうです。
 ここは可笑しくて可笑しくて声を上げて笑いました。
 ここまではよかったのですが、ここからだんだん雲行きが怪しくなりました。
 肝心な推進委員については我々が求めていたその権限の強さなどには触れず委員の報酬や出勤日数などに矮小化されたものばかりでした。
 挙句の果てには苦情申出人の裁判費用の補助はどうするかなどという無駄遣いの議論に及び、それを言い出したのが保守系議員でした。
 安部啓治議員とそれに同調したのは
○○(注・実名がでていますが、個人名が問題ではないと考え、新井の判断で○○にしました)議員です。
 じつは○○議員の父親は部落解放同盟筑紫地区協議会の幹部でした。
 ふつうなら男女参画は総務や文教扱いなのが厚生なのは利権絡みだからです。
 休憩後の採決では山路議員が「圧力を加える電話などに屈せず委員会の主体性が」などと、問題の本質とは程遠い、問題のすり替えに終始し、結局全会一致で可決されました。

 この書き込みに対し次のような抗議の意見もあります。

659 名前:エージェント・774[sage] 投稿日:2005/12/09(23:14:26 ID:w16O9UUg
>>654
 ここに明らかな人権侵害があります。
 なぜ、このようなネット上で、実名で被差別部落出身であることを晒す必要があるのですか?
 これは、紛れもない,人権侵害です。
 このような書き込みを許すわけにはいかないと思います。
 絶対に許せません。このようなことをする人が現実にいるから、人権侵害救済法が必要なのです。

 すると、太宰府市議会は「誹謗・中傷」であり「人権侵害」であると、姿勢を一層強めています。

94 :白石純一・議事課/事務局長 :05/12/22 11:11 HOST:219.166.28.108<8080><3128><8000><1080>
対象区分:[個人・三種]優先削除あり
削除対象アドレス:

http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/654-655 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/657-659 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/663-666 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/669-670 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/672 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/675 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/678 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/704 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/712-713 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/723 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/725 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/732-733 

削除理由・詳細・その他:
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/735 
http://off3.2ch.net/test/read.cgi/offmatrix/1129194696/755-756 

 貴下が管理する掲示板「【福岡】人権擁護(言論弾圧)法案反対運動OFF2」については、個人の氏名を出し誹謗・中傷する書き込みがなされており、個人の人権を侵しています。
 したがって、早急に削除されますようお願いいたします。なお、削除されない場合は、警察等の公的機関に対し相応の手続きをする所存ですので、念のため申し添えます。 
  平成17年12月22日  太宰府市議会 議長 村 山 弘 行

 以下は、「人権擁護法案ポータル」(http://wiki.livedoor.jp/pinhu365/d/FrontPage)からの引用です(そのまま)。
 削除の根拠を問いただしていますが、明確になっていないようです。

2ちゃんねるより
太宰府市に電話取材をしたID:gt7P+i3h0さんの報告です。
12月27日
127 名前:名無しさん@6周年[] 投稿日:2005/12/28(水) 20:33:05 ID:gt7P+i3h0
〒818-0198 福岡県太宰府市観世音寺一丁目1番1号
太宰府市 議会事務局 議事課
電話:092-921-2121、Fax:092-921-1601mailto:giji@city.dazaifu.fukuoka.jp

太宰府市「議事課の○○です。」
私 :「どうもお世話になります。インターネットの掲示板の件でお電話させていただきました。削除依頼は本当に太宰府市の白石さんがなさったんですか?」
太宰府市 「そうですね。そういう形になります。」
私 :「本当にそうだったんですか。削除依頼された内容は嘘ではなく真実なんですか?」

太宰府市 「差別的表現がみられると判断しましたので、それに基づいて管理者の方に削除依頼をしました。」
私: 「あと警察などに手続するというのは本当ですか?」
太宰府市:「その件につきましては、今のところ協議を行っているというところです。」
私 :「協議というのは議員の方がしてるんですか?それとも市の職員が?」
太宰府市 「それにつきましては議会のほうになります。」
私:「そうですか。では警察に手続するというのは決定事項ではないんですね?」

太宰府市 「決まってはいませんね。」
私: 「それにも関わらず警察に手続すると書いてしまったと。」
太宰府市 「そうですね。そういう形になりますね。」
私: 「はぁ。決まってないと・・・」
太宰府市: 「そうですね。協議をした上で判断するということになりますね。」
私: 「その協議はいつごろ行われる予定なんですか?」
太宰府市: 「予定はまったく決まっておりません。」

私: 「それも決まっていないと?」
太宰府市: 「ええ、そうですね。」
私: 「あと差別的表現についてですが、具体的にはどのあたりが差別的表現になるんでしょうか。」
太宰府市: 「個人の名前が入っているというところですね。」
私: 「具体的に言いますと、議員の父親が部落開放同盟の幹部だったというところですか。」
太宰府市: 「そうですね。そのあたりですね。」

私: 「幹部であることを書くとなぜ差別的表現になるんですか?」
太宰府市: 「そこーですねぇ・・・・」
私: 「ええ」
太宰府市: 「・・・・(よく聞こえなかった)」
私: 「幹部であるというところは別に差別的表現ではないんですよね?」
太宰府市: 「ええ」
私: 「・・・・え?!。差別的表現ではない?」
太宰府市: 「いえ。ええまぁ、そういったところを含んだところの言葉ですよね。そのあたりが差別的表現を含むというところですね。ですから、その言葉だけではなくてその前後もですね、削除依頼ということで出しているということなんですけど。」
私: 「そこだけではなくて他にもあると?」

太宰府市: 「ええ。一つだけではなく複数の箇所についても削除依頼を出させていただいています。」
私: 「いくつかあるということですが、具体的に二~三個挙げてもらえますか?」
太宰府市: 「いま手元に資料がないので、今どの部分がということは言えないんですが。」
私: 「実は私が書いたレスも削除依頼されているんです。ある方が人権侵害だとレスされていたので、『どの人権を侵害しているんですか?』と書いたんです。このように、どの人権を侵害するのかと掲示板で質問することも人権侵害ということなんですか?」
太宰府市: 「いますぐに、この部分が人権侵害ですよと指摘するのは難しいですね。」

私: 「どこがどのように差別的表現なのかを指摘できないと、太宰府市が言論弾圧していると感じますが。」
太宰府市: 「実はいろいろなご意見をいただいております。」
&color(blue{私}: 「私としては、たった1行しか書いていないのに、『自分の書き込みの一体なにがいけないの?』と納得できない部分もあるんです。どこが差別的な表現なのかご返事いただくことはできますか?」
太宰府市: 「ご連絡差し上げましょうか?」
私: 「書き込みを読むと部落解放同盟の糾弾で自殺した人がいるとかあって・・・・太宰府市もつながりがあるんでしょう?」

太宰府市: 「そういうつながりはないと思います。私もどういった団体かというのは詳しく知りませんが・・・」
私: 「部落解放同盟も政府と交渉できる団体らしいので、太宰府市が表向きにそうした団体と関係を持つのは悪いことだとは思いませんが、自殺者がでるほど激しい糾弾会を行う団体と、表面的にせよ関係を持っている太宰府市に、自分の情報を差し出すのは躊躇しちゃいます。情報出してそういう団体に『こんばんは』なんてたずねてこられたら怖いです(笑)。太宰府市はHP持っているのでそちらに返事を書いてもらえませんか?」
太宰府市: 「それについては事務局だけで判断できませんので・・・」

私: 「議員さんの承認も必要なんでしょうね。」
太宰府市: 「はい。今回も議員の総意ということでやっておりますので。」
私: 「え?これは議員の総意なんですか?」
太宰府市: 「そうですね。」
私: 「でも議長の名前で出てますよね。」

太宰府市: 「議長一人ということではなくて、議会の中でということになりますので。」
私: 「では決議なさったということですか?」
太宰府市: 「現在、委員会の中ではかっております。」
私: 「抗議文を出すときに委員会の中で決議はあった?」
太宰府市: 「決議といいますか、委員会でこういう抗議文を掲載しようと決定したということです。」
私: 「じゃあ、かなり本気なんですね。」
太宰府市: 「委員会の中でやっておりますので。」
私: 「ではお願いがあります。私の書き込みも含めて、一体全体どの部分がどのように差別的表現だといえるのか、もっと詳しく説明してくださいと議員に伝えてもらえますか?それをHPか2ちゃんねるに載せて欲しいんです。さもないと、何が差別的表現なのか分からずに、何度でも同様の書き込みをしかねません。確信犯で書き込みをする人もいるでしょうが、私はそうではありませんから。」

太宰府市: 「わかりました。」
私: 「この話しを議員に伝えてもらって、実際に議員が行動を起こすのはいつごろになりますか?」
太宰府市: 「今年は議員の集まる予定がないんですよ。なるべく早くお伝えしたいとは思っているんですが、具体的な日取はなんとも・・・。」
私: 「来月はどうですか?中旬・下旬という程度で構わないんですが。」
太宰府市: 「そのくらいにはなんとか。議長にもお伝えできると思います。」
私: 「よろしくお願いします。あと、警察に対する手続うんぬんの書き込みについてですが、手続する気がないのに書き込むと脅迫罪に該当するらしいのですが、その点はどのように考えてますか?」

太宰府市: 「いまのところは抗議文に掲載されている通りとしかお伝えできないのですが・・・」
私: 「2ちゃんねるでも法律に詳しい人が議論しているようなので、私もそうなのかなと思っているんです。この点についてもHPか2ちゃんねるでお応えいただきたいと思います。」
太宰府市: 「はい。その件についてもお話しを伝えておきたいと思います。」
私: 「今回のお話は2ちゃんねるに書かせていただきますね。」
太宰府市: 「ん?どのように書かれるのかは想像もつきませんが。」
私: 「信じてもらえるかどうか分かりませんが、客観的に書かせていただきます(笑)」
太宰府市: 「はい(笑)」

昨日電話した内容は以上です。○○さん、客観的に書けてますでしょうか?(笑)
今日電話したとき怒鳴ったりしてすいませんでした。○○さんが悪いわけじゃないのに・・・・

12月28日
では今日の電話を報告します。今日は二回電話しました。
まず最初の電話です。

私: 「どうもお世話になります。昨日電話したものですが、抗議文の掲載を決定した委員会名と、その委員会に所属する議員を教えてください。」↓漢字が分からないので、最初に変換された漢字で名前かいてます。

太宰府市: 「委員会名は議会運営委員会です。所属議員は委員長の岡部、副委員長の山路、武藤・佐伯・福広・清水・小柳・渡辺・不老・安倍明・村山(市議会議長)・大田・安倍けいじです。これは各会派の代表、常任委員会会長・正副議長・特別委員会委員長から構成されます。」
私: 「抗議文は議員の総意だそうですが、出席していない議員はどうなりますか?」
太宰府市: 「会派の中で賛否を決めているはずなので、そこで意見が反映されます。」
私: 「なるほど。どうもありがとうございました。」

二回目は録音していないので、メモを頼りに書きました。
話しの流れはこんな感じということで読んで下さい

私:「先ほど電話したものです。たびたび電話してすいません。さっき聞き忘れたことがあって。」
太宰府:「いいですよ。どうぞ。えっと、さきほど議会運営委員会で決まったと話ししましたが、正式には違いまして、議会運営委員会で投げかけて、最終的に議員協議会で決まりました。」
私:「議員協議会ですね。そうでしたか。(←いまひとつ違いが分かってないので生返事・・・)ところで警察に対する手続とは告発ですか。」
太宰府:「告発まではいかなくて相談という形になると思います。」
私:「『なお、削除されない場合は、警察等の公的機関に対し相応の手続きをする所存ですので、念のため申し添えます。』という内容は委員会で決めたんですか?それとも白石さんが?」
太宰府:「委員会で決めました。」
私:「手続の対象になるのは誰ですか?2ちゃんねるの管理人の博之さん?それとも書き込みをした人?」

2ちゃんねるの管理人と想定してこの質問をしました。ところが・・・・

太宰府:「それはまだ決まっていません。」
私:「えっ、決まってない?」
太宰府:「決まっていません。」
私:「昨日、私の書き込みも削除対象になっているとお知らせしました。私も警察手続の対象になる可能性があるんですか?それは困るんですが。」
太宰府:「それはまだ決まっていません。」
私:「書き込んだ本人が削除依頼しても削除されないこともあるし、私には差別する意図は全くなかった。それなのに、警察から呼び出しを受けるかもしれないということですよね。じゃあ私が警察手続の範囲から逃れるためには一体どうすればいいんですか?」
太宰府:「・・・・・・」

このあたりから手が震えるほど怒ってました。かなり怒鳴ったし。
でも、私も当事者になるかもしれないと分かって激高してしまった・・・・

私:「どうして私が警察のやっかいになるかもしれないんですか?『どの人権を侵害したことになるんですか?教えてください。』とたった一行書いただけなのに、なぜそんな目に合わされないといけないんですか。」
太宰府:「削除範囲と警察手続の範囲は違いますので。」
私:「それは議員の判断ですか?それとも議事課の判断ですか?」
太宰府:「議事課の判断です。」
私:「じゃあ議員の判断は違うかもしれないじゃありませんか。私の書き込みは警察手続の範囲内ですか?」

太宰府:「あなたの書き込みは警察手続の範囲には入らないと思います。」
私:「それも議事課の判断ですよね?議員が範囲内と言ったら覆されるでしょ。」
太宰府:「範囲はまだ決まっていませんから。」

私:「太宰府市のHPの抗議文は手続の範囲内も決めずに書かれているということでしょ。その範囲に私も入っているかもしれないわけですよね。これはいったいどういうことですか。差別する意図もなく、たった一行書いただけなのに、何故わたしが警察手続の範囲内に入るかもしれないんですか。しかも、太宰府市議会がその範囲を決めることになってる。どうして私が警察に呼び出されるかどうかを太宰府市の議員が勝手に決めるんですか?何様のつもりですか。こんなこと許せません。議長と話しがしたいんですがかわってもらえませんか。」

太宰府:「さっきまでいたんですが・・・。お待ちください。」
太宰府:「お待たせしました。議長はすでに帰宅しているようです。」
私:「他人を疑心暗鬼にさせたままご帰宅ですか。私は一体どうすればいいんですか。」
太宰府:「議事課のほうから貴方様のことはきちんと伝えますので。差別する意図はなかったなどを。」

私:「でも、それをどう受け取るかは議員の腹ひとつで決まるわけでしょ。あの程度の書き込みで警察から呼び出しを受けるかもしれない、しかもそれを太宰府市議会で決められてしまう、一体これはどういうことですか。そんなことをどうして太宰府市議員が決めるんですか。こんなことは許せません(怒)」
太宰府:「範囲に入るのは、直接的に差別的な書き込みをした人だけになると思いますので。」
私:「それは議事課の判断でしょ?議員は違うかもしれないんでしょ?」
太宰府:「議員の中には書き込みをきちんと読んでいない人もいるでしょうし、こちらから貴方様に差別的意図はなかったときちんと報告しますので。」
私:「きちんと読まずに私の書き込みを削除依頼に出すとはどういうことですか。」

太宰府:「いえ、一連の書き込みをまとめて削除依頼させていただいたということで。先ほども申しましたとおり、削除依頼の範囲と警察手続の範囲は違いますし、手続をするかもまだ決まっておりませんし。」
私:「差別的書き込みだから削除依頼を行い警察に手続しますと書いたんでしょ。差別的書き込みでないのに一連の書き込みという理由だけで削除依頼したら、太宰府市が言論を弾圧したことになるじゃありませんか。それこそ人権侵害ですよ。太宰府の議員は一体なにを考えているんですか(怒)」

太宰府:「削除依頼範囲と警察に手続を依頼するかどうかの範囲は違いますし、貴方様が差別的意図はなかったことは、こちらとしても議員にきちんと伝えます。警察に手続するかどうかも決まっていませんが、もしそうなったとしても貴方の書き込みが手続の範囲に入ることはないと思います。直接的な中傷の書き込みだけが対象になると思いますので。」

私:「その中傷的な書き込みを、私はアンカー付きで引用しました。直接的な中傷が対象なら私の書き込みも手続の範囲内に入ってしまいます。だからこそ、私も書き込みも削除依頼したんでしょ。そうではないというなら、削除依頼は太宰府市の言論弾圧ですよ。だいたい直接的な中傷って一体なんですか。個人名を出したということらしいけど、部落解放同盟がきちんとした団体なら、その幹部をしていたということがなぜ中傷になるんですか。それこそ部落解放同盟に対する中傷じゃないですか。馬鹿げてますよこんなことは(怒)」

太宰府:「貴方の書き込みが警察手続の範囲になることはまずないと思いますから。」
私:「それは議員が決めることですよね?議事課が決めることではないんですよね?
安心なんてできません。法務省の人権擁護法案や鳥取県の人権侵害救済条例がどれほど
危ないものなのか、当事者になってよくわかりました。だいたい、正式な団体の幹部であることを書き込むのが何故中傷になるんですか。2ちゃんねるに書き込んだことで警察に呼ばれたら大恥ですよ。これが脅しじゃなくてなんだと言うんですか。警察に手続するとかしないとか、そういうことを書き込む時点で太宰府市が脅しをかけていることになるんじゃないですか。議員に対する書き込みで議員が中傷だと感じたなら、警察云々の書き込みで太宰府市から脅されたと私が感じるのは理解できるはず。この削除依頼は太宰府市の私に対する脅しですよ。そうでないと議員が言うなら、HPや2ちゃんねるに中傷や差別的発言とは何か2ちゃんねるの書き込みのどの部分が中傷や差別になると太宰府市が考えているのか、きちんと発表するべきです。」

太宰府:「今回お話しいただいたことはきちんと議員にお伝えいたします。」
私:「口頭や文書でなく、私がいま怒鳴っている声を録音して議員に聞かせて欲しいぐらいです。・・・・・でも○○さんに怒っているわけではないんですよ。謝ります。仕事納めの日に嫌な目にあわせてごめんなさい。来年も良いお年を。」
太宰府:「わざわざありがとうございます。」

まとめです。誤解して欲しくないのは電話で対応してくれた議事課の○○さんはいい人でした。きちんと対応してくれただけでなく、貴方は大丈夫と自信をもって請け負ってくれたことは電話でもよく伝わりました。だから、私が怒っているのは、議事課や○○さんに対してではなくて、自分達が中傷されたからといって、わけのわからない抗議文や警察云々の脅し文句でインターネット掲示板の書き込みを萎縮されるようなことをした議員に対してなんです。

自分達がどれほどの権力を持っているのか、議員の言動がどれほど強い影響力を持っているのか、議員はもっと自覚を持つべきではありませんか。その力を私みたいな小市民を脅すようなことに使って・・・・

自分自身が当事者になるかもしれないと分かったとき私がどれほど嫌な思いをしたのか議員は分かってますか?2ちゃんねるでのちょっとした書き込みで、差別などまったく意識すらしたことのない書き込みで、自分が市議会議員から訴えられるかもしれないと分かったときの気持ちといったら・・・・・

こんなことはもうたくさんです。太宰府市議会議員が私を警察に訴えるというなら、
訴えるというなら・・・・・私はどうすればいいんでしょう・・・・・・

 どうでしょうか?
 議員個人のプライバシーを暴露し、社会的評価をおとしめるたぐいのものでないことは明らかです。議論されている委員会と利権の結びつきを「部落解放同盟」をリンクにして考察した文章だと思います。
 ○○とされた議員が書き込み者に見解を求め、是非を議論することはありえても、議会が一市民の言論に、きちんとした理由も示さずに、「警察」まで引きあいに出して是正を求める態度は如何かと考えます。
 議論を通じて、「人権」「言論の自由」の互いの理解が、また周辺の人の認識もたかまる方向で解決するのが筋ではないかと思います。

 

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条例は必要なのか?

 日本海新聞24日付は、

 来年6月の施行を目指している鳥取県人権侵害救済条例をめぐり、県が28日に弁護士を含む有識者らと意見交換会の開催を検討していることについて、県弁護士会(松本光寿会長)は23日、会に参加することを明らかにした上で「(席上で)問題点をはっきりさせたい」と、条例の改廃を求めていく姿勢を示した。また、県から条例施行規則検討委員会の委員派遣も求められているが、「いかなる協力もしない」と拒否を鮮明にした、とある。

 公開の論議は、午前9:30~ 県民文化会館。

 一方、「諸君」06/2号に鳥取発「人権条例」のココが危ない、が掲載されている。

 櫻井女史は、「侮辱した」などという「心情」を問題にしている。・・ 心の問題を法律で定義することは不可能、というのが国際社会の常識。人権救済という美名で「人権侵害」をしようとしているといわれると、指摘。

 その他の人も、新たに人権救済条例を制定して対応するべきかというと疑問がのこる、これまでの思惑、底意等々の背景がほとんど理解されていない、との指摘がなされる。

 「解同」との関係では、3年前の6月議会で前「解同」県連委員長の杉根県議が地方人権委員会の考えを知事にただしたこと、県内では「部落解放月間」の一ヶ月間に県などの主催に「解同」系団体が協賛に名をつらねていること、条例24条が研修などへの参加を勧奨することと係わって「解放研」の所長が「研修義務づけを提言」していることなどが明らかにされる。

 そして、「解同」の狙いについては、全国人権連の月刊誌「地域と人権」05年2月号から「解同が権益を得る足がかりの確保にある」点を引用している。

 弁護士会が国連パリ原則の立場から批判していることは、ここでも明らかにされている。

 問題は、法案や条例の推進体である「解同」の邪な意図・狙いにあり、行政や議会が真に主体性をもてていないことである。

 行政や議会は、県民の人権実態をふまえ、救済等の措置を真剣に検討するのであれば、現在の法案・条例論議の延長ではなく、本来の立場に立ち返り、啓発研修の有り様や相談体制など総合的に吟味すべきである。

 「解同」系の差別論からの啓発や研修は一見解であって、すべてではない。救済機構という手段が目的化されていると思われる。人権を理解する方策はひとつではない。

 あらためて、条例の廃止・凍結を求める。

 

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加波山・自由の魁

 山頂近くの大きな岩には「自由の魁(さきがけ)」と題した檄文(げきぶん)が刻み込まれ、そこから少し南に離れたところに「旗立石」と刻まれた石柱(写真掲載、本日撮影)がある。

 この山は明治17(1884)年、若者16人が自由民権の旗を掲げて挙兵した「加波山事件」の舞台。

 大雪で列島は大変。「自由」も大変。

 足腰が今も痛い。がたがきている。毎日山登りをしたら、と家族の声。

 高低差200メートルあまりでこれ(540Mまでは車)。追いつめられていたとはいえ、かつての人は健脚だ、と岩に腰掛けて感慨にふけった。

 当時山麓に撒かれたた檄文ビラには
「そもそも建国の要は、衆庶平等の理を明らかにし、各自天与の福利を均しく享(うく)るにあり。而(しこう)して政府を置くの趣旨は、人民天賦の自由と幸福とを護(かんご)するにあり。決して苛法を設け圧逆を施すべきものに有らざるなり。然るにーー」と始まり、
 決起の目的を
「自由の公敵たる専制政府を覆し」「完全なる自由立憲政体を造出せんと欲す」と述べる。

 無憲法時期に、また維新戦争の雰囲気が濃厚な時期、それこそ戦いとる「自由」であったのだろう。
 いまも民権の顕彰は続いている。

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県同教への出張命令は違法

全同教は毎年、行政後援のもと2万人を動員して集会を開いている。この県段階の組織に役職員で張りついている人件費を公費で負担していた問題で、「研修に値しない」と返還命令が下された。

職務離脱などは聞いたことはあるが、公費で「解同」方針の実践にあたる経費を負担していたもの。

文科省は問題の指摘を受けて、その国庫による人件費の返還を求め、手を引いた。

いまも「法人」を隠れ蓑に公務員が「研修」と称して派遣が公然と行われている。(三重と大分県)

以下、福岡人権連事務局長 植山光朗氏の報告をみていただきたい。

いち民間団体の県同教(福岡県人権・同和教育研究協議会)などの組織運営のための出張をくりかえす小西清則全同教(全国同和教育研究協議会)委員長兼県同教副会長(いずれも当時)に県教委が給与や旅費を支払うのは違法として、人権連福岡県連の会員と退職教師らが麻生渡知事に対し、返還を教育長や教諭らに請求するようにもとめた住民訴訟の判決が

11月4日、福岡地裁でありました。

一志泰滋裁判長は「県同教など団体の運営は公務とは言えず、出張命令は違法」として原告の請求を認め、同教諭や当時の校長、県教委の部課長ら7人に311万円の返還請求をするよう知事に命じました。

この裁判は県教委が、県同教派遣が住民監査請求の対象になった2000年3月、それまで

11年にわたって県同教に派遣されていた同教諭を急きょ、特別扱いの「枠外配置」で県立小倉商業高校に復帰させ、授業を免除し、県同教などの組織運営のため、年間2百日以上出張が出来るように「同和教育ヤミ専従」として配置し、給与と出張旅費など約9百万円を支払ったのは違法とした住民訴訟です。

判決は校長の出張命令は裁量権の逸脱と指摘。小倉商業への配置について「団体への派遣以外の目的を有していた事情はなく、小西教諭を各団体に派遣し、各団体の運営に携わらせることにあった。配置は不法行為上の違法性を有する」と断定、県教委の部長、課長の責任を認めたもので、原告勝訴の内容です。

原告団・弁護団は「解同と癒着し歪んだ同和教育行政体制が違法であると判断し、行政関係者の責任を認めたもので評価できる。判決を真摯にうけとめ、控訴することなく同和教育行政を抜本的に是正し、教育行政の主体性を確保し、公教育を推進していくことを見守っていく」との連名の勝訴声明を発表。

しかし、

11月17日、県教委が福岡高裁に控訴したことから、原告側は判決が職務免除の手続きを経た出張は「校長らに過失はない」として、県教育委員と教育長の責任免責したことを控訴審で正すため付帯控訴することにしました。

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県同教へ教諭派遣は違法

 「解同」といういち民間団体の運動方針を公教育に持ち込み、教育基本法がいう「教育の中立性の確保」を平然と侵してきた事態に、司法の断罪が下されました。

 荷担してきた行政も同罪です。

 以下、植山さんの報告を引用します。

    福岡県人権連事務局長 植山光朗

 福岡高等裁判所五〇一法廷(中山弘幸裁判長)は十月十七日、福岡県人権・同和教育研究協議会(県同教)への教諭の同和教育研修派遣の違法性を問う住民訴訟控訴審(県同教裁判)で判決を言い渡した。
 高裁判決は、原告住民側が主張した派遣の違法性、それに伴う給与支払い(公金支出)を全面的に認め、それぞれを違法とした。派遣に関しては「県同教の運営を担うことを主たる目的としたことは明らか」として「教育公務員特例法第20条を大きく逸脱し違法」と明確に断罪した。
 県同教についても高裁判決は、派遣先である県同教は、同和団体のひとつである解同の関係者が常時副会長の一人に就任し、その解同福岡県連と事業の共催等連携を図っており、教育の中立性の要請から研修先の適性に疑義を生じさせ、派遣教諭がいち民間団体にすぎない県同教に実質的に勤務するのとほぼ変わらない状況にあったと判断。
 さらに高裁判決は、県同教への教諭派遣の違法性の内容及び程度は、教育行政に課せられる法的に適正な職務執行義務に反するものとして、客観的には著しく合理性を欠き予算執行の適性確保の見地から看過し得ない程度に至っている可能性は否定できないと断じ、「県同教への教諭派遣とそれにともなう給与支払い(公金支出)がいずれも違法」と断定した。
 しかし、麻生知事に対する給与返還は「派遣の具体的な実態を認識していたとまでは言えず、供与支払い調査義務を怠った過失責任を問うことは困難」として棄却。
小柳正之・元教育委員長については「訴訟に先立つ監査請求の対象になっていなかった」として却下した。


 控訴審判決要旨はつぎのとおり。

 平成15年(行コ)第14号 
 公金違法支出損害賠償、福岡県違法公金支出返還請求控訴事件判決要旨

1 事案の概要
 本件は、福岡県の住民である被控訴人らが、福岡県教育委員会(県教委)が福岡県人権・同和教育研究協議会(県同教)に研修名目で教諭を派遣し、この派遣教諭に県から給与が支払われたことが違法であると主張して、その損害賠償を求めた住民訴訟である。
 原判決は、改正前の地方自治法に基づき、県知事である麻生個人に対し、平成11年3月から平成12年3月までの間の派遣に係る給与合計約1億1363万円の損害賠償を求めた甲事件、平成12年8月から平成13年7月までの間の派遣に係る給与合計約1億0005万円の損害賠償を求めた乙事件、そして、改正後の地方自治法に基づき、執行機関である県知事に対し、平成13年9月から平成14年8月までの間の派遣に係る給与合計約8704万円の損害賠償を県知事である麻生個人及び県教委委員長である小柳個人へ請求するよう求めた丙事件の3件について、甲事件は請求棄却、乙事件及び丙事件は請求認容(被控訴人ら勝訴)と判断した。このうち、乙事件と丙事件で敗訴した麻生及び県知事から控訴されたので、本判決は、この両事件について判断した。

2当裁判所の判断
(1)丙事件の県教委委員長小柳に関する訴えが適法か否か
ア 地方自治法の定めにより、住民訴訟の提起前に監査請求を経ていなければならない。監査請求では、対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を個別具体的に特定することが必要で、その程度は監査委員がその対象を認識することができる程度であれば足り る。そして、この対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について、監査請求を経ていると認められる限り、監査請求において求めた具体的措置の相手方と異なる者を相手方とし、監査請求において求めた措置の内容と異なる請求をすることも許されると解される。

イ 本件で監査請求の対象として記載されている財務会計上の行為は、派遣教諭への給与支出の違法である。これに対し、丙事件の小柳に関する訴訟の対象は小柳が県同教への教諭派遣に関係したことによる小柳への損害賠償請求権の不行使という怠る事実である。このように、両者は、その対象を大きく異にしている。特に、原審では、被控訴人らはこの怠る事実を問題にした形跡がない。このことからしても、被控訴人らの監査請求には、小柳に対する損害賠償請求権の不行使という怠る寮実をその内容としていたとは認 められないことになる。結局、丙事件の県教委委員長小柳に関する訴えについては、監査請求を経ていないことになるので、不適法として却下を免れない。

(2)県同教への教諭派遣が違法であるか否か
ア 派遣教諭の数は、毎年8名ないし13名であった。これに対し、県同教の常勤職員の数は僅かに1名ないし3名にすぎない。従前から派遣教諭の多数が県同教の会長、副会長及び事務局長等の役員に就任し、県同教を代表して他の同和問題関係団体等の会合に参加することもあった。派遣教諭は、県同教が実施する各種会議の開催、運営に従事し、頻繁にそのための出張をしていた。県教委自身が本件派遣を県同教に対する人的支援と捉え、本件派遣の廃止後は県同教を中心に行われてきた主な同和教育、人権教育の研究・実践を県教委が主体性と責任を持って主催するとして、県教委、県同教、解同福岡県連合会の三者で協議した。これらの事実を総合すると、県同教の運営が実質的に派遣教諭によって担われてきたこと、すなわち、県同教への教諭派遣がその運営を担うことを主たる目的としていたことは明らかである。

イ 教諭の長期研修に関する規則によれば、研修期間は6か月以内が原則とされる。ところが、県同教への教諭派遣は、いずれも数年間に及び、研修期間の明示もないまま、結果的に11年聞に及んでいる例もある。研修期間の長期化は、研修内容からの要請よりも、むしろ県同教の円滑な運営からくる要請によるところが大きい。派遣教諭の中には、その終了と同時に定年で退職した派遣教諭もおり、中には退職するまで延べ13年間にわたって派遣され、その間に県同教の会長に就任している例もある。これらは、一般の教諭の長期研修とは大きく異なる。また、研修成果の報告も十分になされていたとはいいがたい。加えて、派遣先である県同教は、同和問題の運動団体の一つである解同の関係者が常時副会長の一人に就任し、その解同福岡県連合会と事業の共催等連携を図っており、教育の中立性の要請から研修先の適性に疑念を生じさせる。まして、派遣教諭が、県同教の事務局員として、民間団体の役員選挙のための出張や法律制定運動の実行委員会へ出張することも、研修の趣旨からしても望ましくないものである。

ウ 確かに、国及び県の指針において、教職員の研修並びに同和教育団体の育成、学校教育及び社会教育における指導者の育成の必要性が謳われており、これらが極めて重要な間題であることはいうまでもない。しかし、教職員の研修と同和教育団体の育成や社会教育における指導者の育成とは本来別のものであり、その目標に関する個々の法律が規定する手続でもって行われなければならない。その意味で、教特法20条3項、長期研修規則に基づく研修名目で、同和教育団体である県同教の運営を担う目的で本件派遺を行うことは、その法の趣旨を大きく逸脱している。

エ 以上のとおり、県同教への教諭派遣は、いずれも実質的には県同教の運営を担うためのものであり、教特法20条3項が規定する研修の趣旨を大きく逸脱しているから、違法と断ぜざるを得ない。

(3)派遺教諭への県からの給与の支払が違法であるか否か
 乙事件及び丙事件における教諭派遣に限れば、従前よりも研修期間が短縮しているものの、本件派遣の経緯や実態等からすると、単に教特法20条等に違反するにとどまらず、派遣教諭が一民間団体にすぎない県同教に実質的に勤務するのとほぼ変わらない状況にあったと評価される。そうすると、県同教への教諭派遣の違法は、これに関する職務命令、ひいては派遣教諭への県からの給与支出の違法に連なる関係にあるものと解される。この派遣教諭への給与支出の違法による県の損害は、まず、第1に違法な県同教への教諭派遣に関与した者が負うべきであるが、この給与支出に関与した者もその責任の有無が問われることになる。

(4)県知事麻生に派遣教諭への給与支出に関する損害賠償責任があるか否か
ア 県知事は、県教委の所掌に係る事項について予算執行に関する事務を管理し及び執行する(地教行法24条5号)。しかし、学校職員の任命及び服務監督に関する権限は県教委がこれを有し、県同教への教諭派遣を命じたのも県教委である。この県知事と県教委との権限の配分関係からすると、県教委が行った教特法20条に定める事務については、県知事は、同処分が著しく合理性を欠き、そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り、同処分を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置を採るべき義務があり、これを拒むことは許されないと解される。
 そして、本件の県同教への教諭派遣の違法性の内容及び程度は、教育行政に課される法的に適正な職務執行義務に反するものとして、客観的には著しく合理性を欠き予算執行の適正確保の見地から看過し得ない程度に至っていた可能性を否定できない。

イ そこで、県知事の故意又は過失の有無を検討しなければならない。すなわち、派遣教諭への給与支出の本来的権限者は県知事であるが、その専決権者は教職員課長であるから、このような場含には、本来的権限者は、専決権者が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により、右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、責任を負うべきであると解される。
 この点、県議会における質疑の経過等からすると、県知事も本件派遣に関する派遣教諭の人数、派遣期聞の長期化、研修内容等に関して疑問が指摘されていることは認識していた可能性はあるが、その当時、本件派遣の具体的な実態までも認識していたことを認めるに足りる証拠はない。また、県教育公務員の研修の実施に関しては、県知事の権限事項ではなく県教委の専権事項であり、県議会における質疑も直接的には県教委の教育長に対して行われている。そうすると、いまだ具体的な調査義務が県知事にあったとはいいがたく、それらを契機として具体的な実態の把握に努めなかったことをもって、直ちに県知事
 個人に財務会計上の権限行使に当たっての過失があったと評価することは相当でない。平成12年6月1日に派遣教諭への給与支出が違法であるとして県知事に対する甲事件の損審賠償請求訴訟が提起され、平成13年7月27日に乙事件被控訴人らによる乙事件の監査請求がされ、同年9月21日にこれに対応する棄却決定がされるなど、本件派遣の問題は、次第に顕在化しつつあったことが認められる。しかし、甲事件や乙事件の監査請求においても、県監査委員は県知事を監査対象機関とはせず、県教委や関係市町教育委員会を調査したにすぎないから、これらを契機として、県知事が本件派遣の具体的な実態を認識していたということはもちろん、これを認識し得たともいいがたい。結局、丙事件の期間である平成14年8月まで派遣教諭への給与支出が継続されたことについて、県知事に上記調査義務を怠った過失責任を問うことは困難である。
 したがって、県同教への派遺教諭に対する給与の支払に関して、麻生に県知事としての故意又は過失を認めることができないから、麻生に対する損害賠償請求は、いずれも理由がない。

(5)結論
 丙事件のうち小柳に関する訴えは不適法なものとして却下を免れず、また、被控訴人らの乙事件及び丙事件のその余の請求はいずれも理由がないから棄却する。

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法案反対の議会意見書

 以下は、東京都日野市議会で2005年6月17日に議員提出議案第13号として異議無く可決された意見書です。

内閣総理大臣 小泉純一郎 様
法務大臣   南野千恵子  様

 人権擁護法案の国会提出に反対する意見書

 平成13年に人権擁護推進審議会が行った、「独立の機関を中心とした新たな人権擁護制度」を求めた答申を受けて、政府が提出した人権擁護法案は、国会審議の過程で、メディア規制条項などの抜本修正を求める世論が高まり、平成15年10月の衆議院解散により廃案となりました。しかしながら、政府は前法案にほとんど修正をしないまま今国会に法案の再提出をめざしており、これには下記の問題点が指摘されています。

 「人権侵害」の定義があいまいなため恣意的解釈が可能であり、市民の間の言動まで「差別的言動」として人権委員会が介入し、規制することになれば、国民の言論・表現の自由、内心の自由が侵害される恐れがあります。この問題点を残したまま法案が成立するならば、基本的人権である言論の自由が奪われ、あらたな人権侵害につながる恐れがあります。

 よって、日野市議会は言論統制の時代を将来せしめる、法案の政府提出に強く反対するものであります。

 以上、地方自治法99条の規定により意見書を提出します。

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人権擁護法案の動向と言論の自由、憲法『改正』問題

 この稿は9月16日に全国人権連愛知県連主催の学習会で述べたものです。

 人権擁護法案について3月以降、週刊誌、月刊誌等々マスコミなどでずいぶんと注目され、いろいろな方が問題を指摘する文章を発表されています。つい最近も週刊「新潮」に載っていました。327議席、全議席の68.1%を占める圧倒的数字、野党が今後どう論戦を挑もうがいよいよ恐怖の時代がスタート。人権擁護にサラリーマン増税、悪法目白押しというタイトルで取り上げられています。

 この記事のなかで人権擁護法案に関わって上智大学の田島教授が触れています。民主主義の危機です。与党独裁体制で懸念されることは人権擁護法案です。人権擁護という名の下に言論弾圧を正当化するこの法案が与党の圧倒的な数によって成立する可能性があると懸念を表明されています。田島先生はマスコミ論の立場から法案の問題を指摘しています。

 この法案には人権委員会の規定があり、ここに強大な権限が与えられています。例えばあるメディアが疑惑の政治家の取材を開始し、本人や秘書、家族などに取材を行おうとする。しかし政治家がこの行為を人権侵害だと委員会に訴え、委員会がこれを認定したら、メディアは取材しないよう勧告を受け、立ち入り検査まで受けてしまいます。これは政治家にとって不都合な報道はもちろん、公明党、いわゆる創価学会の池田大作名誉会長に対する批判を許さず、人権侵害を理由に取り締まろうとするものです。戦前の言論弾圧となんら変わらない状況が生まれてくることになります。

 与党が議席の3分の2を占めたこの国会の中で、人権擁護法案、さらには憲法改正という問題、サラリーマン増税といった悪法が今後目白押しに、そして一気に与党の力をもって押し切られるのではないかと懸念を述べられています。

 そもそも人権擁護法案の出発は、同和対策事業の終結にともない人権課題に移行するに際し1996年に作られた人権施策推進審議会が2001年5月に人権救済制度の答申をまとめたことによります。この答申を土台に作られたのが人権擁護法案です。もとより答申に問題があり、これが法案に反映しています。

 経過を言いますと、この法案は2002年3月に閣議決定がなされ、参議院で先に審議となり法務委員会に掛かりました。参考人質疑も行われましたが、時を同じくして刑務所内での人権侵害問題が発覚し、法務省の外局に人権委員会を設ける政府案では公権力に関わる刑務所内や入管施設などでの人権侵害を、これら身内の職員には公平に処理できないとマスコミの批判も高まり、法務委員会での議論はストップし、国会のたびに継続審議を繰り返し、2003年10月の衆議院解散で廃案になりました。

 これが今年の3月以降も自民党内の議論がまとまらず再提案されずにいる状況です。

 この法案はどういう内容か簡単に触れます。

 人権擁護法案の第1章には目的が書いてあります。第1条では人権の侵害により発生し、または発生する恐れのある被害の適正かつ迅速な救済、または実効的な予防を掲げています。第2条は定義。人権侵害とは不当な差別、虐待、その他の人権を侵害する行為をいう、というのみで、不当な差別についての定義が具体的ではありません。さらに第3条。ここが私たちは問題と捉えています。人権侵害等の禁止が書いてあります。不当な差別的取り扱い。具体的な例示では、公務従事者や不動産などを提供する立場の者、事業主が採用、または労働条件その他労働関係に関して人種等を理由とする不当な差別的取り扱いがあげられています。また特定の者に対して、その者の有する人種などの属性を理由とする侮蔑、嫌がらせ、その他の不当的な差別言動、これを禁止すると規定しています。さらに人種などの共通の属性を有する不特定多数の者に対して、当該属性を理由として不当な差別的取り扱いをすることを助長し、または誘発することを目的で当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を文書の配布、掲示、その他、これらの有する方法で公然と摘示する行為、不当な差別的取り扱いをする意思を広告、掲示、その他、これに類する方法で公然と表示する行為、こういうものをあげています。

 この法案の出発点の大きなウエイトは同和問題です。同和問題を念頭にまた、部落出身という属性をこれらの条文の頭に置いてみれば、どのような差別的取り扱いや差別を助長、誘発する言動を禁止するものかがよくわかります。法務省の人権擁護局長は先の参議院法務委員会で議論になっていた折り、この法案について、部落解放同盟の部落解放基本法を想定して部落差別規制法を取り入れたものだと答弁しました。これらの条文は同和問題を念頭に読むと非常に分かりやすくなります。

 結論をいえば、この法案は人権擁護と耳障りのいい表現になっていますが、国民に対する公権力や社会的権力である大企業などによる人権侵害や差別の解消を実効あらしめるものではないということです。

 また、特定の者に対してその者が有する人種などの属性を理由とするそれらの不当な差別的言動を第3条で禁止するとしています。人種などの属性、たとえば部落、在日を理由とした侮蔑や嫌がらせなどを取り締まりますが、これだけを取り締まりの対象にするのではなく、その他の不当な差別的言動が規定されており、これらも特別救済の対象にしています。つまりそれは、相手方を畏怖、困惑させ、または著しく不快にさせる事柄があった場合、それらも差別的言動とくくって強制捜査をしたり、罰金をもって強制的にそれらの資料の入手なども行えるようにしています。強制捜査権を持っているにも関わらず、その内容が侮蔑、嫌がらせ、畏怖、困惑、不快など、こうした場合に特別調査の対象になるとしているだけで具体的な例示になっておらず、本人の非常に主観的な受け止め方で特別救済が動き出す仕組みになっています。畏怖、困惑、不快などの外形的要因、どういうものを不快というか等がきちんと示されていないので、恣意的運用も可能となります。

 私たちは、この法案の問題点を明らかにするために韓国の国家人権委員会設置法との比較を当初から行ってきました。韓国の国家人権委員会設置法は2001年11月にできました。ここでは人権の定義について、憲法および法律で保障する、あるいは大韓民国が加入、批准した国際人権条約および国際監視法で規定する人間としての尊厳と価値および自由と権利のことをいう、と書いています。しかし日本の場合には人権侵害とは不当な差別、虐待、その他の不当な人権侵害をする行為とあるのみで、何人も他人に対して人権侵害をしてはならないと、それだけしか規定していません。法律が作用する場合、どういう人権規範に依拠するかは非常に大事な問題です。日本は人権の概念について規定もしていません。ですから基本的人権を規定した日本国憲法をふまえてとかいう文章が入っていません。

 対象となる人権侵害の範囲、差別の外形的要因も示していません。巨大な行政機関となる人権委員会という運用する側の恣意的な意図によって人権侵害行為の内容が決められてしまうものです。法律であるにも関わらず国民の守られるべき権利の内容が規定されていない。こうした根本的な問題がこの法案にはあります。この間の産経、読売、毎日新聞の社説をはじめ様々な人たちが、この法案に人権、差別の定義がなく権力的濫用が生じかねないと猛反対しているのはこういうことがあるからです。

 最近政府与党から出てくる法律は、共謀罪新設に関わる問題でも具体的な対象を決めずに、外形的要因を明確にしないまま出してくるのが非常に増えています。共謀罪新設について政府は、国連国際組織犯罪防止条約批准のために国内法整備が必要であるという理由をあげます。2003年の国会から4国会に渡って刑法、刑事訴訟法、組織的犯罪処罰法などの関係法改正案をずっと継続してきました。

 しかし先の国会では衆議院法務委員会で初めて委員会審議が始まりました。ここで何が問題にされてきたのかと言うと、いわゆる共謀罪が国際犯罪に限定されていないことと、死刑や無期懲役、4年以上の懲役、禁固の刑が定められている615種類に上る犯罪行為を共謀しただけで犯罪として最高で5年の刑を科されます。弁護士会をはじめ労働団体、市民団体は厳しく批判の声を上げ反対しました。

 近代刑法では犯罪意思だけでは処罰せず、これが具体的な結果、損害として表れてはじめて処罰対象となる既遂処罰が原則とされています。しかしこの法律では実行行為ではない予備以前の行為だけで処罰できるもので、限りなく思想処罰に近づくものです。この共謀罪が新設されたならば、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行共謀することのみを構成要件としているので、団体活動としての労働組合活動や争議行動、市民の様々なPTA活動も含む分野での活動も犯罪とされ処罰されかねません。国際社会は共謀罪の対象として国際組織犯罪、テロ対策を念頭に置いていますが、日本は国際的な組織犯罪に関わる団体をきちんと規定しないで、テロに対するだけでなく、単に団体の日常活動に対して「共謀」が行われた場合に取り締まるというのです。暴力団であれ国際的なマフィアであれ労働組合運動も含む様々な団体活動のすべてが共謀罪の対象にされます。

 不同意堕胎罪、さらには偽りその他の不正行為による市町村民税の免税罪、こうした国際的ではない、組織的犯罪集団が関与するはずのないものに関わっての相談も「共謀」罪の対象にされてしまいます。法の対象範囲が非常に広いことから国民の様々な活動に制約が生まれるものです。共謀罪が新設されれば例え犯罪行為が行われなくても犯罪行為の実行について何らかの形で相談しただけで逮捕、勾留、起訴の対象とされる危険があり、さらに共謀についての捜査の必要を理由に盗聴、盗撮、スパイ、虚偽の自白強要のために事情聴取など、さまざまな形で国民の団体活動全般が警察の監視下に置かれることになります。こうした憲法の人権規定の空文化や、労組活動を初め社会的市民的活動の圧殺は許されないと、私たちも多くの団体と一緒になって反対運動を進めているものです。

 日本国憲法第19条は、思想および良心の自由はこれを侵してはならないと定めています。これは事実よりも思想を処罰した戦前の治安維持法の反省に立って内心の絶対的自由を保障したものです。無実の立証が困難な共謀罪の新設はまさに現代版治安維持法と言えます。盗聴法や有事法制、生活安全条例などいろいろな形で国が作ってくる法令は国民を管理、監視する社会へ向かう流れになっています。人権擁護法案もこうした国民を管理、監視する社会を強化してゆく流れに位置づけられる法案です。繰り返しますが、国民の権利を制限し処罰対象となる要件が非常に曖昧です。人権、差別の明確な定義がない。畏怖、不快という主観的な要因で人権侵害を定義する。国家による国民の言論、表現の自由の抑圧、人権救済の名を借りた内心への介入に繋がりかねないものです。

 こうした内心の自由に関わる領域に畏怖、不快を生じさせるような差別があったら、この人権擁護法案の下での人権委員会や人権擁護委員が介入してきます。Tシャツの柄が気にくわない、Tシャツに何かのマークがあり、それが不快に感じたなどと言って、それを差別的言動の一種、さらに誘発、助長となる行為だと訴えることが可能となります。本来、Tシャツにどんな柄があろうが対人関係の間で人権侵害は生じないわけですが本人が差別を受けたように思う、不快に感じただけで差別的言動となり特別救済手続きの対象にすることが可能です。人権や差別の範囲をきちんと規定していないから生じる問題です。しかし、人権や差別を法律で定義すればいいのかという問題があります。 言論表現に関わる領域を「禁止」の対象とすることの是非が次の大きな問題です。

 これまで同和問題の関係では、部落解放同盟が一方的に差別と断定認定したら差別事象とされ徹底的な差別糾弾闘争が行政を巻き込んで行われてきました。その結果、不幸にして自殺されるケースも往々にしてありました。人権擁護法案の下で人権や差別がきちんと定義されていないことは国民の権利が明記されていないということです。権力の濫用と共に解同の恣意的な運用もまた可能になるということです。

 三重県松坂では高校の先生が生活上などの不便から町内会の分離運動を行い、その際に発言した内容が、同和教育推進教員や解同等により一方的に差別発言にされ2度の糾弾会が行政の庁舎内で公務員を400名ほど動員して行われ、その過程で校長先生が自殺に追い込まれました。今年から名古屋高裁で控訴審を闘っています。

 この人権擁護法案は内心に介入し、実態的に差別行為がなくても「差別」とされ、またその恐れがあれば助長行為と規定され、告発や過料までとられます。出版物でも事前差し止めができます。解放同盟が熱心に人権擁護法案制定を働きかけるのは第3条の差別禁止条項を利用して自分たちの差別糾弾闘争を合法化してやりやすくし、利権の確保を維持する狙いがあるからです。

 一方、解同に対する批判もこの法律は受けとめますが、解同は、具体的な運用に係わる人権委員会の人権委員、さらに2万人に及ぶ人権擁護委員の選任に関わって被差別部落や障害者など差別の当事者を委員に入れるべきだと主張し、法律の中でも人権問題に精通する団体の意向や推薦を受けると規定しているので、そうした一部の偏向した人たちが入りかねないので、まともにとりあげられるかは疑問です。解同が熱心に作ろうとしている意図がここにも表れていると思います。

 言論表現に介入する人権擁護法案は、国際的にも異例です。

 例えば韓国の国家人権委員会は紆余曲折を経てできました。当初は政府機関の外局に置くものでしたが3年間の国民的闘争の中で廃案にし、金大中大統領の公約の中で政府から独立した機関として作ると明記し、その下で、日本でいう会計監査院のような位置づけの機関としてできました。イラクに対する派兵について韓国政府に対し異を唱えたりしました。

 韓国の人権委員会が対象とする差別の中身は、日本のように言論・表現を対象とはしていません。基本的には平等権侵害の差別行為しか扱いません。韓国の人権委員会法が平等権侵害の差別行為として規定しているのは、合理的な理由なくして性別、宗教、障害、年齢、社会的身分、出身地、出身国家、民族、容貌など身体条件、婚姻、妊娠または出産、家族状況、人種、皮膚の色、思想または政治的な意見、刑の効力が失効した前科、性的指向、病歴を理由にした行為。このように具体的に平等権侵害に関わる差別行為を例示して、それらの行為があった場合にこの人権委員会は調査、救済の対象にしています。

 日本は救済する対象規定、擁護すべき人権規定、これらが欠落しています。欠落どころか言論・表現という自由のなかで一番優先されなければならない対象領域を法律で規制しようとしています。マスコミだけでなく国民の言論・表現を規制しようとするところに韓国や国際社会の機関と格段の違いがあり、これが大きな問題なんです。

 こうした日本の法案は権力や解同に都合がよく大企業の様々な労働人権侵害なども免罪します。大企業の人権侵害をこの法案は取り扱いませんから大企業のやりいいようになっています。

 法案は2003年10月に廃案になり、その後、法務省は多少修正したのは一定期間の後に組織の見直しをする、5年後といいます。マスコミに対する規制は一定期間凍結する。組織の一定期間後の見直しとは、人権擁護法案の下で設置される人権擁護委員会を法務省は法務省の外局に置き、民主党や解同は内閣府の外局に置けと言っていることに係わっており、先に参議院で議論になっていた折り、解同は野中などと裏交渉をしていましたが妥協の点を見いだせませんでした。そして今回法案として再提案するに際して考えられたのが一定期間の後に組織の見直しをするという点です。

 前回マスコミは、取材報道の規制になると反対キャンペーンを張りました。マスコミの取材に関わって生じる人権侵害については問題があります。しかし、マスコミの自主的な取り組みがきちんとなされるまで凍結し、発動はしないというのが今回の案です。マスコミが権力にどういう顔を向けるかによって規制を発動させるか止めるかを決めるというものです。この2点だけを修正して通常国会に出すと自民党と公明党、民主党の幹部の間で合意ができたんですが、自民党の中で合意形成が終ぞできなかったものです。 3月の段階での閣議決定ができずに4、5月でも自民党内の推進派、異論派の妥協ができず、都議選後でも折り合いがつかず、国会への再提案は断念すると7月末に与謝野政調会長預かりとなり、8月8日の解散を迎えました。

 自民党の中での推進派と異論派の間での基本的な論点は、私たちが以前から問題点としてとりあげてきたものです。1つは人権や差別の定義があいまいであり、例えば北朝鮮批判、朝鮮総連批判をするとそれが差別だとして言論規制の対象にされるので、人権や差別について定義がないのは問題だと異論派の人たちは主張します。

 もう1つに2万人に及ぶ人権擁護委員の国籍条項の点です。今の人権侵犯処理規程の下での人権擁護委員は日本国籍に限られていますが、今度の人権擁護法案には国籍条項を設けないことで案がつくられています。人権擁護委員に外国籍の人たちがなると例えば、北朝鮮批判、朝鮮総連批判などができなくなる。しかも何か発言すれば強制調査権限を持つ人権委員会が罰金を含む拘束力をもって家宅捜査、事前差し止めになる。これでは言論の自由がない、ということで拉致問題に関わる国会や地方議員、新しい教科書をつくる会に関係する議員、靖国参拝を支持する議員等がこの法案の矛盾、問題だと指摘し、これらの点について修正改善がなければ法案は是とはできないという議論を法務省と自民党執行部相手に行っていました。

 6月初めに異論派がまとめた修正個所について法務省と自民党執行部の回答が彼らに示されました。言論・表現を規制の対象にするというのは審議会答申で触れられていることであり、答申を尊重する立場からその点を除外することは法案の根幹に関わるのでできないというのが法務省等の回答でした。

 また法務省外局に置かれる人権委員会の調査権限について、平沼氏や安倍氏ら異論派の人々はなるべく弱くしようとして審議会的な第8条機関にすべきではないかと意見を出しますが、第3条機関としての委員会でなければ政府からの独立性の観点から国際社会の批判を浴びかねない、これらの点は法案の根幹に関わるのでいっさい変更はできないと法務省等は、意見を突き返します。

 異論派は、修正妥協の余地がないことから修正協議をうち切り、政局の問題にすると舵を切りました。一方で、郵政民営化法案に関わって党内民主主義を十分尊重されていない、人権擁護法案についても党内手続きを軽視したやり方で郵政と同様に扱われては困ると、異論派の議員は、郵政民営化法案に反対しました。結果、この選挙で自民党公認を得られず無所属で出るはめになり、異論派の事務局長を担っていた静岡の城内さんは落選しました。平沼、古屋氏らも復党が認められないだろうという事態になっています。

 一方、推進派で自民党の人権問題等調査会の会長で、与党の自民党と公明党で作っている人権問題懇話会の座長を務めている古賀誠氏は、郵政民営化法案に反対だけれども棄権し、政局にはならないだろうと大勢を反対、棄権の方向へまとめ上げましたが、結果的には自民党公認が取れ、仲間には裏切り者と言われているようです。

 この間、ずっとこの法案のとりまとめをしてきた熊代氏は以前、地域改善対策室長等をしてきましたが結果、公認を得られず10月初めに行われる岡山市長選に出ざるを得なくなりました。郵政大臣をやった福岡の自見庄三郎氏は郵政民営化法案に反対して刺客を放たれ落選しました。自民党の中で推進派、異論派とされてきた人たちがこの小泉ハリケーンのもとで双方ともばらばらになってしまいました。今後自民党の部会構成や役員構成がされるのかは分かりませんが、反対派が押し出された形になっています。

 一方、マスコミは朝日新聞を除いて、平沼、古屋、城内氏らの国会内での異論派の行動を応援し、支えるような論点をずっと出し、特に産経新聞はずっとリードしてきてした。言論抑圧の法案は、廃案、出直しと新聞社説で強調するようになりました。

 以前のマスコミは、マスコミ規制の問題と法務省所管の2点しか問題点をあげていませんでしたが、我々も働きかけをやりましたが、マスコミの論調は大きく変わり、法案そのものに欠陥があるとまで問題点を指摘するに至っています。しかし残念ながら山陰新聞や朝日新聞は、差別と虐待を解消するのに有効な人権擁護法案になぜ解同関係者や在日関係者が入ってはだめなのか、早期成立をさせるべきではないかという社説を出しています。全国人権連は朝日新聞にたいし批判見解を出しましたが、大方のマスコミ論調は今のままでの法案では廃案だ、一から出直せという到達点にあります。

 こうした到達点を踏まえて私たちの今後の闘いを組んでいくことが非常に重要です。この法案は、国民の言論・表現の自由を守る規定が一切なく、人権、差別についての定義もなく、しかも不快、畏怖といった事柄が生じたらそれが差別的言動として規制することが可能だという、非常に重大な問題を持っているものです。

 自民党のかつての異論派が指摘した点を修正すればいいのか、つまり人権や差別の定義が法案にあればいいのか。違います。言論・表現に係わる国民間の矛盾は、国民の間で自由な対話や司法などを通じて十分に解決できます。そうであるにも係わらず、国が強制捜査権をもって介入するのは、自由な言論を阻害し、国に都合のいい言論のみの流通を認め、それ以外を排除、異端視するもので、到底認められません。

 言論・表現の領域にあらたな法的規制を必要とする「差別や虐待」の実態や根拠はありません。個々の人権が置かれている実態の改善のために制度の大幅な見直しは緊急に必要であっても、言論の規制は必要ありません。憲法改正も新たな人権の導入が切り口にされ、公共性が全面にでています。戦争ができる国にするのかどうかという問題です。 基本的人権に制約を設ける策動は、絶対に許されません。この法案を再提案させない取り組みを地方議会も視野にいれて、引き続き強めていきたいと思っています。

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文科省との話し合い

 2005年11月15日
文部科学省
 2005年度要求書等について

(1)申し入れ事項
1,国民主権や戦争放棄、基本的人権を明記する日本国憲法と行政による教育条件整備や教育の中立性をうたう教育基本法の改悪をやめて、国民の平和に生きる権利を擁護し、「小さな政府」ではなく、暮らしと福祉、教育の充実がはかられるようにされたい。
2,えせ同和行為根絶のために、「部落解放」を名乗る団体などによる「確認・糾弾」行為を一掃し、えせ同和排除の広報強化や相談窓口の整備などを具体的にされたい。
3,義務教育の国庫負担制度を維持されたい。
4,深刻な事態にある生徒・学生など青年の就職難に関わり、統一応募書式の徹底、新規学卒者の求職確保、ニート対策などに十分な予算を確保されたい。
5,学校現場に対し、「日の丸」「君が代」の強制をやめること。

(2)要求・話し合い事項
1,児童生徒支援加配教員について、その趣旨にそった適正な配置と、大幅な人員増をはかるとともに、各都道府県別に配置人数・実績・今年度人数と予算を明らかにされたい。また、地方単独での児童支援加配教員配置数も各都道府県別に明らかにされたい。さらに、「加配教員」数等の算出根拠が不透明であることから県ごとの法令明記を 求める。
2,「人権教育」と称して、社会問題に対する理解や解決に向けた態度育成が学校教育の方針とされているところ、運動団体との連携をマニュアル化しているところがみられる。教育の中立性の確保など審議会第1次答申の留意点をふまえ是正指導を徹底されたい。
3,公費支出による人権(同和)教育研究協議会等の事務局への教員派遣は、教育の中立性を損ね、教師の服務規程に反する。福岡県同教裁判の判決が明瞭に示しているところである。改善指導を徹底されたい。

交渉の記録

 焦点になっている義務教育費の国庫負担制度維持の要求に、省は「全国どこでも同じ条件で教育が受けられる憲法上の要請を担保するのが義務教育費の国庫負担制度」とし、先の中央教育審議会で大多数の委員から制度維持の意見が出された、中教審の結論(制度維持)を尊重すると回答。質問に答えて、東京、神奈川、千葉、埼玉、静岡、愛知、大阪の7都府県が一般財源化を主張していることも示しました。
 深刻な事態にある青年の就職問題で、統一応募書式の徹底、新規学卒者の就職確保やニート対策などを求めたのに対して、統一応募用紙の「保護者氏名」欄を削除し、3月31日付で文科省・厚労省連名で統一応募用紙の趣旨の徹底を依頼する文書を出し、5月13日付で経済団体等に新卒者の就職確保の要請をした。また平成16年で64万人といわれるニートの問題を憂慮し、「若者自立挑戦プラン」に基づく職業観・勤労観を育てるキャリア教育の推進に努めている、と回答をしました。

 児童生徒支援加配教員問題では、同推教員と同じ状態にある福岡県などの実態や配置が全国的にアンバランスで配置基準が不透明であることを指摘して、是正を要求し教員増も求めました。省としては教育上の困難をかかえる学校に対して趣旨を説明し、義務教育費の国庫負担問題と連動して予算確保ができるかどうか11月中に結論が出る予定と回答しました。
 教育の中立性と教員の服務規定に違反する人権(同和)教育研究協議会事務局への教員派遣問題では、省は、今年6月の調査で岡山県、兵庫県、滋賀県が16年度で廃止、三重県と大分県で公益法人派遣法にもとづき県議会の承認を得て派遣しているとし、公金が使われていることから中立性の確保や住民の誤解を受けることのないよう今後も指導していくとしました。

 人権教育については、憲法・教育基本法にもとづき、自主性の尊重、異なる意見への寛容、社会運動との区別が必要としました。自治体の「人権教育基本方針」などに見られる「人権文化」という用語について、法律の中では使われていないし省は使っていないと回答しました。
 なお、教育基本法「改正」問題で省は、教育水準の向上など教育基本法が果たしてきた役割を評価する、としたほか弓矢人権裁判の県教委側の陳述書で三重県の同和教育課長が「解同」の「確認・糾弾」を「研修」としている問題について見解を求めたのに対して「係争中の裁判」「個別の事例」として見解を述べることを避けるなど、課題を残しました。

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何のための意思統一か

県人権局 一般常識に従い解釈

  表現の自由、報道の自由が制約されるおそれがあるとのご意見については、条例上も「最大限に尊重し、これを妨げてはならない」と憲法上の保障が再確認されている(第31条)。ただ、広く国民の知る権利を担う作用についての判断は、司法救済にゆだねる選択肢もあると考える。
   人権侵害の定義があいまいとの点については、条文は抽象的なものとならざるを得ないが、解釈、運用は当然社会一般の常識に従うもので、違法、不当なものとされなければ人権侵害には当たらないもの。

  また、公表や調査協力拒否に対する過料が過大な措置との点については、人権侵害の定義が拡大解釈されることによる二次被害の可能性への懸念が大きいものと考えるが、人権侵害からの救済を実効あるものにするという政策判断に基づき、他の制度でも用いられている手法が採用されている。

  執行機関としては、条例の目的が実現されるよう、最大の配慮と細心の注意をもって誠実に執行したいと考えているが、さまざまな多くのご意見が寄せられており、弁護士の方をはじめ大学関係者、人権擁護に当たっている方から条例に関するご意見をうかがう機会を設けたいと考えている。

http://www.nnn.co.jp/tokusyu/joureitou/051219.html

とある。

  しかし誰が相談するか。

  「差別者」がいる、何故放置してるのか。という相談が多くなるのは目に見えてる。

http://www.nnn.co.jp/news/051220/20051220007.html

  鳥取県は県議会十一月定例会の議論を受けて、県人権侵害救済条例の見直しに向けた動きを活発化させている。十九日には県庁で職員対象の勉強会を開く一方、二十八日にも県弁護士会から意見を聞く会を開催する方向で調整している。条例を提案した県議会は県の出方をうかがっている段階だが、修正意見に耳を傾ける姿勢も見せている。

  研修になを借りた「洗脳」としか映らない。

  あせりにも似たものを感じる。

  

http://www.nnn.co.jp/news/051216/20051216006.html

 法務省は十五日、「日本司法支援センター」(法テラス)の来年十月の運用開始に向けて全国で唯一、鳥取県で試行した電話相談業務の状況を発表した。電話の総数は予想の二倍を超えるなど市民から好評で、同省は今後、需要予想を大幅に上方修正する方針。試行に参加した県弁護士会などは、年内にも相談内容の傾向などをまとめて本番に備える。

  いずれにしても、信頼が背景になければならないだろう。

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権利の制限

月刊誌「地域と人権」

05年10月5日号 所感雑感

  自民・公明の与党が衆議院で327議席、定数480の3分の2を占める特別国会が11月1日まで行われる。郵政民営化法案以外にもテロ特措法改正や障害者に応益負担を求める法案、実行行為がなくても「共謀」を罰する法案など、先の国会で廃案になったものが審議にかかるという。
  一方、自民党の中川秀直・国対委員長は18日テレ朝の「サンプロ」で、人権擁護法案に関し「まだ提出されていませんが、提出されてくると思いますし、ご懸念の無いような法律で解決しないといけない」と発言。櫻井よしこ女史は、安倍晋三しか反対者が残っていないと成立への危惧を漏らしていた。
  こうした悪法以外にも、税制改悪、憲法改定(改悪)の段取りが議論される事態にある。
  この4月、衆参それぞれの憲法調査会は議長に報告書を提出した。マスコミは「新しい人権」(プライバシーの権利、知る権利、環境権等)を喧伝した。しかし、この「権利」の保障規定を欠いていることで如何なる法的困難があるのか、また現実の問題が如何に解決されるのかも示されず、憲法改正「発議」の念仏とされる。
  近年の憲法体系書では、これらの人権はその人権の性質に応じて該当箇所に収められるか、包括的人権ないし幸福追求権として扱われるかのいずれかになっている。
  つまり憲法解釈による人権の再構成は現憲法下でもすでに為されてきたことであり、憲法改正を必要とするものではない。
  しかし自民党の新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)が8月1日に発表した「新憲法第一次案」は、「自衛軍」を突出させ、現憲法の「公共の福祉」を、すべて「公益及び公の秩序」という「国益」優先・「秩序」維持の国家的軍事的観点を強調するものに変えている。
  もとより近代憲法は、絶対王政の国王の権力を制限するところから生まれ、国家権力を制限し国民の自由を保障するもの。立憲主義という、政治権力を憲法にもとづいて行使するという考え方であるが、今日では国民を管理する道具に貶められている。

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鳥取県条例の制定根拠は曖昧

月刊誌「地域と人権」

05年11月5日号 所感雑感

  鳥取県議会の清風と自民党、信の3会派などは10月12日、議員発議の『人権救済推進および手続きに関する条例案』を賛成多数で可決した。昨年12月の定例県議会に県が提案し継続審議となっていた条例等の内容を各会派が「修正」したもので、全国の都道府県では初めて。
  5日に浜田妙子県議が疑義を表明。11日の委員会質疑では山田幸夫県議(解同県連書記長)が賛成を表明。12日の議会最終日には討論・可決と。拙速であるとの批判は免れない。県弁護士会は「憲法違反」、マスコミ15社も「条例を容認できない」と共同して申し入れ。県内外から批判が高まっている。
  地方単位での人権救済制度の検討は、「人権擁護法案」が02年3月に国会に提出された後の6月定例県議会の一般質問で、片山知事が「住民連合」の杉根修県議(解同県連顧問)から要請を受けて表明していた。
  知事「政府、国がやるのであればオンブズマンのような仕組みとか、司法機関が関与したらどうかとか、国会がつくったらどうかということを申し上げましたが、この人権擁護委員会のようなものを地方単位でつくったらどうか、国一つでつくるのではなくて、地方単位でこの種の人権擁護機関をつくったらどうかということを考えております。恐らくその方がもっときめ細かい的確な判断が下せるのではないかと思います」
  知事は、「解同」の意向を受けつつ官僚機構排除の思考から、地方での人権委員会を人権特区の構想ももちつつ、具体化を歓迎しているのだろう。
  しかし、条例は人権擁護法案と同様に、人権・差別の定義があいまいで、県民の言論分野に過料をもって介入するなど差別の解消に逆行し人権侵害行為を引き起こしかねないもの。しかも平成16年度に鳥取県内で法務局に寄せられた人権侵犯事件は約220件だが、どれほどが「悪質」なのか、処理規程で間に合わなかった事例はどれほどか、司法に附して救済に困難がどれほど生じたのか、実態は明らかにされていない。「人権侵害に悩む人がいる」(知事)から「必要」?
  憲法の人権規定が地方で取り扱いに差異が生じる事態は、「分権」ではない。

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人権擁護法案の動向

月刊誌 「地域と人権」 

05年12月号 所感雑感

  杉浦法務大臣は11月2日、マスコミの取材に対し「あのまま出したらつぶれるのは分かっている。成立できる案を出さないといけない」と述べ、次期通常国会への提出にはこだわらず政府案を抜本的に見直す必要があること、与党の議員が中心となって検討を行うことを提起している。
  しかし、17日に全国自由同和会が開いた集会で、自民党人権問題等調査会長の鈴木俊一・衆議院議員は「人権擁護法案は、与党、政府並びに自由同和会の皆様方の長年にわたる取組の集大成であり、私といたしましても、人権問題等調査会長として、党内のご理解を得て、早期に法案を提出できるよう努めてまいりたいと考えております」と「次期通常国会での成立に意欲を示した」という。
  一方で「解同」・民主は、来年の通常国会に提案させるべく「与党内で検討をさらにすすめる、早期に提出できるように努める」という「小泉」答弁(9月29日)を引き出している。そして「法の必要性」を働きかけてゆくこと、「鳥取の成果を全国化」してゆくことを表明している。(11月7日付「解放新聞」)
  その鳥取で片山知事は14日、弁護士を中心とする有識者で作る規則制定委員会を設けると表明し、「いくつかの会派から条例施行前の見直しを検討したいとの意見表明があった」ことを明らかにした上で、「結果的に県議会が修正せず、会で出た意見の行き場がない時は(県)独自の改正案を出すことがあり得る」と語り、施行前の改正案提出の可能性を初めて示した。反対世論を無視できないからだ。
 人権は本来、全国的な統一基準で守られるべきものであり、マスコミ報道では法務省の幹部ですら、「人権救済は全国一律、平等に行うべきであり、地域でばらばらの対応になるのは好ましくない」とコメントしている(14日の全国人権連と省との交渉でも同様の立場が述べられた)。解同条例が多く制定されている福岡・長野・広島などで、現時点で鳥取のような「解同」主導の「人権侵害」機関設置条例を制定しないとの表明がなされている。
  国は地方段階で委員会の設置には問題があるとして認めてこなかった真意は、鳥取のような事態を想定してのことか。

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損保会社の人権侵害問題等を追及

 2005年11月14日

法務省あて

 全国地域人権運動総連合

   議長  石岡 克美

                                     
 2005年度要求書等について

(1)申し入れ事項
1,国民主権や戦争放棄、基本的人権を明記する日本国憲法と行政による教育条件整備や教育の中立性をうたう教育基本法の改悪をやめて、国民の平和に生きる権利を擁護し、「小さな政府」ではなく、暮らしと福祉、教育の充実がはかられるようにされたい。
2,ハンセン病元患者の社会復帰等に関し、社会的に偏見が残されていることから、宿泊拒否や入居拒否などの権利侵害が生じている。相談・救済体制を確立するとともに、実効ある啓発を強化されたい。また、自治体及び民間の行う啓発活動・支援活動に関して、助成措置を講じること。

(2)要求・話し合い事項
1,先に廃案となった人権擁護法案は、人権や差別に対する明瞭な定義もなく、「差別的言動」等と称し言論表現行為への国家の介入により国民の言論活動を抑圧になりかねず、真の人権救済に値しないものである。新たな法案は国会で全会一致で可決されるよう、人権委員会は権力や大企業による人権侵害のみを特別救済の対象にし、報道や表現規制をその対象からはずし、国連パリ原則にのっとった独立性と実効性が確保されるものにされたい。
2,「鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」が来年6月から施行されるが、人権擁護法案と同様の問題を抱え、マスコミをはじめ県内外から条例改廃の意見が噴出している。自治体の人権救済は苦情処理・監視に係わる領域では容認できるが、国がこれから整備をはかる内容と同一的な機能をもつ機関設置については、人権救済に差異が生じるなど、憲法上の問題を内包している。省の見解を明らかにされたい。
3,部落問題に係わる「確認・糾弾」行為は、えせ同和行為そのものであり、えせ同和行為の横行の要因でもある。「確認・糾弾」会への公務員の参加は相変わらず続いており、「落書きや発言」があれば「解同」に通報・協議することが求められ「通報」が遅れると行政の認識が問われたりもしている。こうした事態を省はどのように認識しているのか、法務局や人権擁護委員、地方公共団体への指導方針も含めて明らかにし、違法行為の社会的排除を強められたい。
4,人権啓発に係わる来年度予算の内容を明らかにされたい。各地の人権啓発では、いまだに同和問題の比重が高く、解決へと前進している現状や課題の背景が明確にされていない。適切な指導を行われたい。
5,行政書士による「職務上請求書」の悪用により、戸籍や住民票が不正に取得される事件が起きている。自治体段階での「個人情報保護条例」に係わり個人情報の管理権から「本人告知」の整備が必要と考えるが、省の見解を明らかにされたい。
  一方、「解同」は行政書士に対する糾弾行為を通じて入手したリストをもとに、自治体に対し情報開示を行っていることについて、違法と考えるが、省の見解を明らかにされたい。
  また、報道によれば地方法務局が把握してる情報をもとに、関係自治体に調査を依頼しているようだが、法務局で把握してる全容、さらに調査の結果を明らかにされたい。
6,A社B損害サービス課が交通事故の対応にあたり、金融庁告示67号(04年12月6日)第6条をもとに、政治的見解や信教、労組への加盟、門地及び本籍地、性生活、犯罪歴に関する機微情報の「同意」を求めていることに対し、憲法上ならびに個人情報保護法と係わって人権侵害につながる行為と判断するが、省として損保等の会社での実態把握とこの件に関する見解を明らかにされたい。

交渉の記録

 省側から土持敏裕・総務課長などが、人権連は石岡克美・議長、新井直樹・事務局長、前田武・常任幹事をはじめ各県代表が参加しました。

 先ず、部落問題に係わる「確認・糾弾」行為は、えせ同和行為横行の要因でもあり、違法行為の社会的排除を強めること、特に弓矢人権裁判と係わって、裁判の陳述書や「解放新聞」で「総務課長の通知」(法務省権管第280号通知)は「(課長が)死文化している」と公言していることについて省の見解を正しました。

 「省としては、当事者同士の話し合いによる解決までも否定するものではないが、民間運動団体が行う確認・糾弾行為について、従来から啓発の手段としては好ましくないと考えているところである。そこで平成元年にその趣旨を通知として地方法務局に発し、現在においてもその考え方を維持しており、確認糾弾に出席を求められた者からの相談があった場合、必要に応じて関係者等に、いわゆる法務省見解を伝えているところである」と、従来の見解を繰り返し、「2002年の交渉の時に、解放同盟との間でそういう発言があったかどうか、ということで調べてみましたが確認はできませんでした。(人権啓発課長が言ったように)通知の線は何ら変わっていない」と、「死文化」発言をきっぱりと否定しました。

  次に人権擁護法案の一から議論のやり直しや違法性も指摘される鳥取県の「人権救済機関設置条例」の問題を取り上げました。

 法について省は「必要な法案。できるだけ早く国会に再提出できるように努力している」と、また「鳥取県の人権侵害救済推進条例については、鳥取県議会という地方議会のご審議を経て成立した条例です。国の立場として当否等について申し上げることは差し控えます」と返答。

 杉浦法務大臣が来年の通常国会にこだわらず与党議員の検討を求めるような発言をしている事に関しては、「出す以上は成立するものでなければならない。そのためには内容や出し方をもう1度検討しなければならないという趣旨であり、この点は我々と変わるところはない」と。

 一方、鳥取をはじめ今後県段階での機関設置条例が全国化しかねない動きがあるなかで、「人権侵害対象範囲が自治体によってばらばらなのは好ましくない」との認識を示し、鳥取で「人権擁護上問題があると判断すれば対応していきたい」とも述べました。

 次に行政書士による「職務上請求書」の悪用により、戸籍や住民票が不正に取得された事件の解明と、「本人告知」の整備について省の見解を求めました。

 省は基本的に各自治体が制定する条例に関することと回答を避け、一方、「今、現在進めている調査の段階では、具体的に部落問題に用いるという情報を入手したという確たる証拠はまだ得られていない。当事者に話を聞かないと具体的にそれをどう使ったのか判明しない」と、「部落差別につながる身元調査」に利用したかの報道を否定しました

 その他、ハンセン病元患者の社会復帰に係わる条件整備の課題等を提起しました。

A社の人権侵害につながる「同意」問題

「政治的見解、信教(宗教、思想および信条をいう)、労働組合への加盟、人種および民族、門地および本籍地、保健医療および性生活、ならびに犯罪歴に関する情報(センシティブ=機微=情報)に関し、保険金の支払いをするために必要な範囲で情報を取得・利用させていただくことを同意いただくものです」・・・・・・・・・・。

 憲法の人権尊重理念を真っ向から否定し、基本的人権を侵害するこの文書は、大手損保会社A社の高知B課が、今年6月、交通事故に巻き込まれた高知市内の中学生の保護者に送った、「同意書の送付について」と題する文書にある記述です。同社はこの文書とともに、「同意書」をその保護者に送っています。 保護者が「同意書」の問題点をすぐに指摘したにもかかわらず、B課が長らく放置していたという対応も問題でした。

 「同意書」そのものには問題の記述はありませんが、法律の専門家によれば「2文書は一体のもの」。全国人権連高知県連(高知人権連)は、この問題でA社に対して「重大な問題だ」ときびしく指摘。 本部と連携しながら、適切な対応を求めてきました。また12月1日には、全国人権連本部と東日本各都県連の代表がA社の本社を訪れ、この問題で話し合いました。

 A社の高知B課はこのなかで、「(『同意書』は)個人情報保護法の施行にともない、高知だけでつくった。本社は一切関与していない。本社からはおしかりを受けている。 金融庁の『金融分野における個人情報保護に関するガイドライン』なども参考にした」と説明。また高知人権連への対応のなかで、高知人権連が「名称はどうあれ、確認・糾弾行為がおこなわれる場には出席すべきではない」と指摘したことに対し、A社は「(確認・糾弾会のことは)承知している。 出るつもりはない」と答えました。

 12月1日、A社は全国人権連に対し、高知B課がイントラネット(企業内の閉じたインターネット)にこの様式を掲示していたことから、社内調査をした結果、8拠点で361枚が使用されていたことを明らかにし、早急にこの回収と破棄、関係者への謝罪をおこなっているとのべました。またこの場でA社は、この問題については「人権上、きわめて問題のある文書」との認識を示し、「これを見た社員が問題意識を持たず見過ごしたり、問題意識を持っても、それを提起しなかったことは遺憾」との見解を示しました。同時に「問題のある文書ではあるが、この問題となる情報の取得・利用はしていない」ことも強調しました。        

 また全国人権連は、11月14日の法務省交渉と、翌11月15日の金融庁申し入れで、この問題を取り上げました。法務省交渉の結果および金融庁申し入れについての結果は、こちらをご覧ください(全国人権連の別窓が開きます)。

 A社はその後、今回の問題についてコメントを発表。「今後、二度とこのような事件を引き起こすことのないよう、これまでの人権啓発研修全般を見直し、社員の人権意識を高めていく」とのべています。

      

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